36.少女人形

滑らかなその肌を

指で圧せば強い反発と

弾力があるだろう


見るうちに

去ってしまう絶妙の

時期を閉じこめた

少女人形


うすく

ひらいた口は

何をか発す

一瞬手前


少女人形 少女とは

少女ではない

少女人形 少女へと

憧れの眼差し向ける

その眼のなかにのみ少女は立つ


別の境遇と選択を生きる

別個の生であればこそ

憧れをうずめることができる

少女人形 少女とは

創造的存在


何かを発す一瞬手前

無限に引き延ばされた直前

少女人形

期待を保持して人に夢を与える

永遠に次の瞬間カタルシスが来ないことを

約束しているから

憧れる者の眼差しは

少女の瞳へも転移して

未倫理の 未完成の 流動性の

少女パラレルを生きられる


少女人形 少女の肉体

手に入れられた手に入らなさ

少女人形 その肌を

触れば夢はし消える

異性性が合一の夢を見せ

性未分性が夢を破る

交互にそれは浮き沈み 繰り返す

その絶妙の時期を閉じこめている

ああ 少女人形

果てなく追う月

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