31.苛性劣等

生きるにあたわない

なんで重い

からだ 人並みの

かなしい構成細胞


まるで駄目な半生を

抱えて眼差した景色の

叱責が辛い

存在を真っ当に許された

草木たち

郊外の人たち

外は鋭く尖った

刺してくる

真っ当で編んだ

針のむしろだ


いっそ来た道を辿って

辿り着ける

故郷もなく

道は途絶し

それでも

時の手が背中を押し もう気化すれすれの

経歴からは恨みの眼光が私に集中する

もう生きることは許されない

なのになんで

まだあるからだ


人する用件を満たさない

満たさないのは

私であって

からだではない からだは

満たさない私を呵責する者のほうに立ち

遠い

家賃滞納された人体

滞納されても休むことなく

体温はどしどし焚かれ

思案のあいだもどしどし焚かれ罪責の

黒煙で私を巻く

人に値しないことで

このからだが

責められるいわれはなく

ただ私独つ

無くなればいいのに

切っても切れず もう

どうのしようも手立てがない


もちろん私にしても

あって許されるならあっていたい

ありながら そしてからだは

還してやりたい

私が懊悩すれば からだに返る

自律を徒に乱し

またそれに懊悩する

こんな精神に

統御された細胞や

器官や

そこを住処すみかとする微小生物や

菌類にも憐れみを覚え

いっそパージできるなら

それが最善の免疫だのに


痛いまなざし

やさしさで人は呵責する

存在を許さないのは

存在が許されない私自身だ

存在が許されない者としての

私をただしく断罪してくれる者はなく

欺くようで

いっそう激しく

呵責は燃え立つ

しかし他者へは

ただしく延焼してくれない


路傍の斜面に咲く

オオキンケイギクは

日本の夕焼けに揺れている

在来種を脅かす

特定外来種 場違いの

可憐にみえる黄色い花

誰にも咎められず

静かにしかし旺盛に

プログラムに従い陣地を広げる

オオキンケイギク 可憐な凶暴

腐食した修羅を内在させる私の

相似形



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