04.球体関節人形

彼女はどこにもいない

どこにもいない彼女のかたちは

ガラスケースのなかで 椅子にすわり

脚を投げ出して

静止して――


気流もなくうすく開かれている口もとは感嘆を

こぼす

一瞬手前で

静止して――


彼女にさわることはできない

さわったら

壊れてしまう

どこにもいない彼女が

どこにもいなくなってしまう


硬いまぶたがやわらかい線を描く

眼窩にはめ込まれた青い瞳の義眼で

見つめられる うつろに


    (人

私は彼女を  /  だと思う

         物)

混乱

それはやまない

関節球

うつろな視線で見つめられ

発音の手前 静止するくち

混乱がある

     のは

       彼女を人だと思うからだよ

それと同時に物とも思っているからだよ

錯覚

でなくってね

実覚こそが疑わしいんだと沈黙する

                」彼女「

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