第24話 二分の一成人式⑦
「潮村さん、ちょっと……」
給食時間が終わるころ、西田先生が私を呼びに来た。職員室横の小会議室に一緒に入り、椅子に座るように言われた。
「潮村さん、あの『わたしのゆめ』のことなんだけど……」
「はい……」
「本心よね?」
「はい……」
「ごめんね、潮村さん。私はここまでとは思っていなかったの。ほんとうにごめんね。辛いよね。あなたのお母さんは、参観日も懇談会も来ないし、電話にはなかなか出てくれないし、提出しなければならない書類もなかなか出してくれないし、困ったお母さんだなあと少しは思ってたの。でも、こんなお母さんだったのね…… 二分の一成人式にも来てくれないだろうし…… この会はあなたにとっては本当に辛いよね。もちろん、あなたが、二分の一成人式でそれを発表するつもりで書いたんじゃないのは私にも分かったわ。それで、潮村さん、式は4年の全クラスでやるので中止にはできないけれど、どうして欲しい?」
「先生、私、出たくないし…… ママにもあのお手紙を渡さなくていいですか?」
「そうね、仕方ないわね」
「それから、式の準備をする時間とその日は、保健室にいてもいいですか?」
「それも仕方ないわねぇ」
「それなら先生、保健室の先生に、私がいてもいいように言ってくれる? わけを話してくれてもいいし……」
「うーんそうね分かったわ。ちゃんと伝えとく。でも潮村さん、なるべく休まずに学校には頑張って来てね。それから…… お母さんのこと、あまりにも辛くなったら、ちゃんと先生に相談してね。」
「はい先生、ありがとう」
「ちゃんとご飯は食べれてるの?」
「今のとこは大丈夫です」
「それならよかった。また相談してね。私からもまた声をかけるから」
「先生、ありがとう……」
七海は安堵した。良かった。西田先生、いい先生だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます