第23話 二分の一成人式⑥

 七海はひとしきり泣いた後、いろいろと考えた。こんな式、辛いものでしかない。何をどう考えてもママも私も絶対に辛い。保護者に渡す用のあのプリントは、どこかにしまっておこう。


 とりあえず宿題のわたしのゆめは書こう。そこにちょっと悲しい夢をたくさん書いて、この二分の一成人式は私には相応しくないことを西田先生に分かってもらおう。そして、この式の準備をする道徳や総合の時間は、遅刻してその時間には来ないか、保健室に行くことを許してもらおう。


 七海は意を決して書き出した。


「わたしのゆめ」              

                                      4年2組10番 潮村七海


 わたしのゆめの1つ目は、いつもおなかいっぱい食べることです。最近、お母さんが家に帰ってこないことがあって、そういうときは何も食べられないことがあります。朝も自分でつくらなければならないので、早く起きられなかったときは何も食べずに学校に行きます。だから、わたしはいつもおなかがすいています。だから、いつもおなかいっぱい食べたいです。

 2つ目は、ディズニーランドに行ってみたいです。土曜日に学校の行事があったとき、月曜日が代わりに休みになります。そんなとき、おともだちがみんなで行っていると聞いたことがあります。わたしは土曜日か日曜日でもいいから、とにかく行ってみたいです。

 3つ目は、お母さんにやさしくしてほしいです。お母さんは夜、かえってきてきげんが悪いときは、ねているわたしをいきなりけってきます。部屋がきたないとか、洗いものをしていないとか、とにかくけってきます。朝も、わたしが学校へ行くしたくをしていると、うるさいと言って、まくらを投げてきます。わたしが悪いのかもしれないけれど、もっとやさしくしてほしいです。

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