第16話 買い物③

「3720円になります。ポイントカードや駐車券はよろしかったでしょうか」


「はい」 


 駐車券って……


 重い荷物を持って、七海はゆっくりと歩いた。家に帰ると、母親はまだ眠っていた。なるべく静かに荷物を置き、もう一度店へ向かった。


「やっぱり今の買い物をもう1回かなぁ」


 七海は店でもう一度、米、ラーメン、今度はのりたま、そして塩と砂糖を買った。塩と砂糖は、塩はご飯にかけて食べてもよいし、そして両方とも最悪の場合水に溶かして飲んでもよかったからだ。


 さらに重い荷物を抱え、七海は帰路についた。途中で疲れて座り込みそうになったが、これもご飯を食べるためだと自らを元気づけ、力を振り絞って歩いた。


 帰ると母親は起きていた。七海の姿を見て、いきなり笑い出した。


「あんた、バッカじゃないの? さっきの荷物とほとんど一緒じゃんっ。そんなにたくさんご飯が食べたいの?」


「いやだって、パンとか卵とか腐るから……」


「へぇ~アンタ意外と賢いじゃん。じゃあまあ気が向いたらおかずを作ったげるよ。まあ、あとカレーとか? お金、残ってんだろ? 大事に使いな」


 絶対、お釣りを渡せと言われそうだと思っていたので、残さず使いきろう、3回目の買い物に行こうと考えていた七海は、少々拍子抜けした。七海はうれしくなって、泣きそうになった。よかった。本当によかった。まだママはまだ優しいんだ。よかった。本当によかった……

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