第12話 弁当

 最初の頃はあったかいお弁当だった。大抵はのり弁だったが、ときどきかつ丼とか、とんかつ弁当とか、からあげ弁当などだった。ああ今日は勝ったんだなというサインだった。七海はこれらが大好きだった。給食に比べて肉類が多いし、嫌いなものがほとんど入っていないからだった。


 しかし時が経つにつれ、コンビニ弁当だったり、菓子パンだったりすることが多くなってきた。ときにはスナック菓子だけのことも……


 そしてとうとう、食べ物がテーブルに置かれていない日がやってきた。冷蔵庫や棚などいろいろ探してみたが、どこにもなかった。


「え~ 何もないって、ママ、ひどい」


 もしかしたら、今日は仕事が休みになって帰ってくるのではないか、それとも仕事に行く前に帰ってくる時間が遅くなっているだけかもしれない、そんなことを考えながら、七海はTVを見ながら母親の帰りを待っていた。


 夜8時になったので、さすがに七海はあきらめて、何を食べようかと考えた。そういえば袋に入ったラーメンがあったはずだ。最近、日曜日の朝昼兼用の食事はこのラーメンのことが多かった。ときには卵が入っていたが、もっぱら何も具のない素のラーメンだった。七海は見よう見まねで作り始めた。


「うん、できた」 


七海は一口すすって食べてみた。水が多すぎたのか、味が薄かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る