第10話 好き嫌い

 母親が料理を作ってくれなくなった理由に、七海には心当たりがあった。2年生のある日、夜遅く帰ってきた母親がいきなりキレて七海を叩き起こした。


「七海っ! 何残してんのよっ。せっかく作った料理なのにっ!」


「だって…… にんじんが……」


バシッ! いきなり叩かれた。


「なに好き嫌いなんかしてんのよっ! すぐ食べなさいっ! 今すぐっ!」


 七海は泣きながら、煮物のにんじんを食べ続けた。


 この後、しばらく経ってから、七海が家に帰ると、母親の料理の代わりに弁当が置いてあることが多くなった。

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