第9話 醤油汁

 七海が4年生になった頃から、七海の母親は夜帰ってこないことがあった。それまでは仕事で酔ってベロベロになっても、遅くなろうとも必ず家に帰ってきていた。


「ああ、おなかすいた」


 一夜ならまだ我慢できるし、冷蔵庫に何かあればそれを食べればよいのだが、今回は二夜連続だし、食べ物も底をついていた。


 七海は仕方なくお湯を沸かし、マグカップに醤油をたらし、お湯で薄めてそれをゆっくりとかみしめるように飲んだ。


「ああ、おいしい」


 ……明日帰ってきたら、叩かれてもいいからお金をもらって、買い物にいかなきゃ。


七海は静かに覚悟を決めた。

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