第6話 洗濯

 土曜日の朝、七海はどうしようもなくなって、母親を起こそうと思い、肩をゆすってみた。

「ねえ……ママ……」


バシッ!


 案の定、平手が飛んできた。


「起こすなっ!」


 七海は泣きながら、今日ばかりは引き下がれないと腹をくくっていた。


「ねえ……ママ……」


バンっ! バンっ! ドンっ! ……


 今度は枕で何度も叩かれた。七海は泣きながらうずくまり、枕の攻撃に耐えながら、必死になって訴えた。

「ねえっママっ! もう着るものがないのっ! 洗濯しないと……」


バンっ! バンっ! ドンっ! ……


「こっちは仕事で疲れてんだっ! できるかっ! 」


バンっ! バンっ! ドンっ! ……


「わたしやるからっ! 今日からわたしが全部やるからっ! ママの分も全部やるからっ! お願い。やり方だけ教えてっ。お願い……」


 攻撃が止み、怒気がおさまった。


「ふんっ ! こっち来なっ」




この日から七海は、ママと呼ぶのをやめた。






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