第3話 追憶

優がめくった史香の日記帳の最初のページには、優と史香とが、付き合い始めた頃のことが、書かれていた。


 ―今日から、大野優くんと、付き合うことになりました!優の告白よりちょっと前から、私も、優のことが好きだったから、本当に嬉しいよ~!これから、よろしくね優。

 なんか、私、日記を書くのって苦手だけど、これから、優との思い出を、自分の字で残していきたいから、何かあったら書くことにします。頑張れ、私!

 でも、SNSにアップするのと、こうやって、手書きで書くのって、違う気がする。なんか、手書きの方が、あったかい、っていうか…。うまく言えないけど、私、日記書くのにハマりそう!

 以上、優と付き合い始めた初日の私の独り言でした!

 PS ちなみに、今日の私の気分は、ブルー!って言っても、気持ちが落ち込んでるブルーじゃないよ。実は私、本当にブルーが好きなんで、今日みたいな日には、ブルーの服を着たくなっちゃいます。だから、優に告白された時も、ライトブルーのブラウス、着てました!もちろん、これは勝負服だよ!だって、優が、

「大事な話がある。」

って、呼び出すんだもん。―


 それを読んで優は、史香に告白した時のことを、思い出した。その時優は、史香への告白を控え、どんな格好で、史香と待ち合わせをしているレストランまで行こうか考え、散々迷った挙げ句、きめ過ぎず、カジュアル過ぎずの服装にしようとした。そして、グレーのテイラードジャケットに、白のカットソー、そしてそれに濃紺のデニムパンツを合わせて、優なりの勝負服を完成させた。

 また、優は今でも、その時の史香の服装を覚えている。史香は、日記に書いてあったブルーのブラウスに、白のスカートを合わせ、また少し高めのヒールのパンプスを履いていた。そして、普段なら少し幼く、そして可愛らしく見える史香であったが、この日はそんな服装のため、優に、いつもより大人っぽい印象を与えていた。

 しかし、優は史香の日記を読むまで、史香の方も、優の告白に備え、勝負服を着ていた、ということは知らなかった。そして、そのことを知って優は、とても嬉しくなった。

「どうせなら、教えてくれても良かったのにな。」

優は、そんなことも思った。

 そして優は、次のページをめくった。


 ―今日は優と付き合い始めてから、3回目のデートです!とはいっても、優とは、サークルで顔を合わせて、話もしてるから、もっと頻繁に会ってるんだけどね。でも、やっぱり2人きりのデートは特別。

 そして、気になる行き先は…、遊園地でした!若干ベタかもしれないけど、本当に楽しかった~。ありがとね、優。―


 「そういえば、3回目のデートは遊園地だったな。」

優は、心の中でそう呟いた。その時のことも、優はいまでもはっきり覚えている。


「やった、着いたよ、優!私、今日の日が来るの、本当に楽しみにしてたんだ~。今日は、目いっぱい楽しんで、いい思い出、作ろうね!」

「もちろんだよ、史香。」

そして、2人は、コーヒーカップに乗ったり、遊園地のパレードを見たり、一緒にランチを食べたりして、楽しんだ。その間、

「ねえ優、一緒に写真、撮らない?」

との史香の申し出で、優と史香は、写真を何枚も撮った。(優は、自分から写真をたくさん撮る方ではなかったが、この日は史香に合わせていた。)また、写真の中の優と史香は、本当に楽しそうな表情をしており、その写真が、2人の仲の良さを、窺わせていた。


 ―そして、夕方、私たちは観覧車に乗りました。―

 「ねえ史香、一緒に観覧車、乗らない?」

優は史香に、そう提案した。

「えっ、まあ、いいけど…。」

「せっかく遊園地まで来たんだから、乗ろうよ。」

そして、2人は観覧車に乗ることになった。しかし、史香の方は、あまり乗り気ではないらしい。

 「あっ、ここが乗り場みたい。行こうか、史香。」

「…分かった、優。」

優の方は、そんな史香の様子に気づかないまま、史香を観覧車に誘った。また、その時は観覧車は混んでおらず、優は、とりあえずラッキーだ、そんな風に思っていた。

 そして、2人が観覧車に乗った瞬間―。

史香が、優の手を強く握った。これが、2人が初めて、手を繋いだ瞬間だった。

 「どうしたの、史香?」

「ううん、何でもないよ。ただ、優と手を繋ぎたくなっちゃった。」

その言葉を聞いた瞬間、優はドキドキした。はっきりと、体温が上がっていくのを、優は自覚した。そして、優の方も、史香の手を、優しく、そして強く握り返した。

「優の手って、こうやってると、あったかいね。」

「そうかな。強く握り過ぎちゃってる?手、痛くない?」

「うん、全然痛くないよ。」

そうしている間にも、観覧車は、どんどん上へ上がって行く。その間、史香は優にもっと近づき、腕を組んだ。

 そして、観覧車が頂上に達した瞬間―、

2人は、キスをした。

 そこは、ドキドキの最高点であった。観覧車が頂上にいるのは、一瞬であったが、2人には、その時間が、何時間もずっと、続いているように感じられた。時が止まるというのは、このようなことを言うのだろうか。できれば、このままずっと、2人でこうしていたい、優と史香は、お互いにそう思った。そして、観覧車の窓からは、夕日が差し込んでおり、その光が2人の顔を、照らしていた。それはロマンチックな光景であったが、その瞬間の2人には、そんなことも、気にならなかった。

 「楽しかったね、優。」

「うん。」

観覧車から降りた優と史香は、自然と、手を繋いで歩いていた。その時は2人とも、まだ夢の中にいるような、そんな気分であった。


 ―実は私は、高所恐怖症で、ジェットコースター類はもちろんダメだけど、観覧車も、怖かったんだ~。でも優が乗りたいって言うから、頑張って、乗ることにした。

 それで、観覧車がどんどん上がっていく時は、本当に怖くて、思わず優の手、握っちゃった。それで、優は、そんな私の手を、優しく握り返してくれた。その時私は、本当に、優のことが好きなんだ、そう思った。だから思わず、腕組みしちゃった。

 優は、一見頼りなく見えるかもだけど、本当は、優しいだけじゃなくて、リードもできる、頼りがいのある人なんだ。本当に私、優と出会えて、良かった!

 ただ、私の高所恐怖症は、分からなかったみたいだけど。―


 「そういえば後で、史香は高所恐怖症だって、言ってたっけ。この時は、気づかなかったけど…。」

優は、2人で観覧車に乗った時のことを、思い返していた。確かに、観覧車に史香を誘った時、一瞬史香の表情が曇ったことは、覚えている。しかし、その時の優は、2人きりのデートで、舞い上がっていたこともあってか、その原因が分からず、またどうしても観覧車に乗りたかったので、史香のそのサインを、見逃してしまった。

 「ちょっと史香には、悪いことしちゃったかな。もう少し、史香の様子に敏感になるべきだった…。」

優は、そう思った。

 そして、史香が手を握ってきた理由も、単に手を繋ぎたかっただけではなく、怖かったからだったんだな、優はそのことにも、改めて気づかされた。その時の史香の気持ちを思い、優は、自分の行動を少し後悔した。

 ただ、史香が、

「優は、頼りがいもある。」

と、日記に書いてくれていたことが、せめてもの救いであった。


 ―ちなみに、今日のラッキーカラーは、赤!赤は情熱の色…だよね?ちょっと恥ずかしいけど、今日はただ楽しいだけじゃなく、観覧車に乗った時に見えた、夕日の赤色のように、情熱的な日でした。

 ありがとう、優。―


 また、優は、この日記を見て、史香が占いが好きだった、ということも思い出した。そして優は、遊園地デートの部分を読み終え、次のページをめくった。


   ※ ※ ※ ※

 ―今日、初めて、優と2人で曲を作りました!2人の初の共同作業!何か、照れるなあ~。

 一応、優が詞を書いて、私がそれにメロディーをつけたんだけど、優の詞、等身大、って感じがして、本当に良かった。だから、私も、頑張っちゃいました!―


 「今度さ、2人で、曲作らない?」

そう話を持ちかけてきたのは、史香の方であった。

「私、今風の曲って、作ったことないから、ちょっと憧れてるんだ~。一応、ピアノのレッスンの先生の宿題で、クラシック風の曲は作ったことあるんだけどね。もちろん、クラシックとポピュラーミュージックって、同じ音楽でも全然違うから、うまくできるかどうか分からないけど、挑戦してみたい!

 それに、付き合っている人との共同作業って、何か憧れない?私だけかな?」

「そんなことないよ。いいじゃんそれ!やろうよ!俺もずっとこのサークルで音楽やってきて、いつかは自分の曲、作ってみたいって思ってたから、挑戦してみたいな。もちろん、俺一人の力では無理だけど、史香となら、やれそうな気がする。一緒に、頑張ろう!

 ただ、俺、音楽経験が浅いから、作曲はまだ無理かな…。でも、作詞ならいけるかも!

 そうだ、俺が作詞をして、それに史香が、メロディーをつける、ってのはどうかな?」

「いいね、それ!その方法で行きましょうか、作詞家の大野優先生!」

「何、急に改まって。」

「ううん。言ってみたかっただけ。」

「そうですか、分かりました。作曲家の新川史香大先生!」

「ちょっと、真似しないでよ!それに、『大』は余計だよ~。」

「そうかな。お似合いだと思うけど。」

「やめて~。」

そう言いながら史香は、優の元に近づき、2人は少しの間、抱き合った。史香にとって優の胸元は、1番落ち着ける場所になっており、また、そんな史香を、優は可愛らしく、そして愛しく思うのであった。

 かくして、2人の共同作業が、始まったのである。


 ―一応、ここで、優の詞を紹介したいと思います!まあ、自分の日記で、誰に紹介するの?って声が聴こえてきそうだけど。

 ともかく、まずはタイトルから!気になるタイトルは、なんと…、『血液型』!―


 「えっ、血液型!?」

史香のリアクションは、一般的な人のそれと、おそらく、同じであろう、優はそう思った。この日優は、何日かかけて完成させたとっておきの詞を、史香に初めて見てもらう所であった。

「そう、タイトルは、『血液型』。」

「あっ、そう…。」

「どうしたの?」

「えっ、何か意外だな~と思って…。」

「やっぱりそう来たか。分かってるよ。実は、この詞、ちょっと意外性を狙ったりもしてるんだ。ごめんね、さっき『どうしたの?』なんて訊いて。」

「ううん、いいよ。私こそごめん。優しいね、優。」

優の小さな気遣いは、いつも史香をときめかせる。

「もちろん、名前は『優』ですから!

 それは冗談だけど、詞の本文、読んでくれる?一応、1番と2番とか、考えて作ってあるから。」

「分かった。」

 史香は、優の詞を、読み始めた。


 ♪偶然おんなじクラスで 出会ったのはそう君だった はじけるような笑顔が とてもまぶしかった


 何とか仲良くなりたくて 友人を巻き込んで 話しかけた内容は そう血液型


 ああ 月並みな 内容の 話かもだけど それが1番 盛り上がる そう思ったんだ


 でも僕が気にしてるのは 本当に訊きたいことは 血液型だけじゃないんだよ


 好きな 映画とか 好きな タイプとか 君を 取り巻くもの 全て


 他愛もない会話かもしれない どうでもいいことかもしれない それでも僕は君に夢中だよ


 いつか 手をつないで 君と 2人きりで 放課後 デートできたら いいな



 僕は根っからのB型で マイペースで気も利かなくて 君を幸せにするなんて できない かもしれない


 でも僕は君が好きなんだ 周りにどう言われようと 君と一緒にいたいという ことが真実


 ああ やっと聞けた 君の血液型はO型 BとOは 相性がいい そう言われてるね


 ほんの些細なことだと 他人が見れば思うだろう でもそんなことで喜んでる僕がいる


 君との 関係も 血液型通りに うまく やっていけたらいいのに


 いつかお似合いの2人になって お互いのことを知り合って 「相性いい」2人だねと 言われたい 


 僕も がんばるから 君を 幸せにするから この 気持ち届いて欲しいよ



 でも僕が気にしてるのは 本当に訊きたいことは 血液型だけじゃないんだよ


 好きな 映画とか 好きな タイプとか 君を 取り巻くもの 全て


 他愛もない会話が少し続いて 君を少し知ることができて そんなことで喜んでる僕がいる


 2人の 相性は 血液型じゃなくて これから作っていくもの かもね♪


 「…どうかな?」

「すごいじゃん優!めちゃくちゃいい詞だね。ちょっと、感動したかも。

 …正直な話、最初、『血液型』って聞いた時は、『大丈夫かな?』って、思ったんだ。もちろん、ほんの一瞬だけどね。

 でも、すごいよ優!男の子の恋する気持ちが、血液型っていう意外なツールと、うまく絡み合ってる感じがする。それで、等身大の男の子の気持ちが、ぎゅっと詰まってると思う。」

「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ。ちょっと、普通にありがちな詞じゃ物足りないかなって思って、こんな感じにしたんだけど、史香に気に入ってもらえて良かった!」


 ―ちなみに、そういえば優は、私たちが付き合う前に、血液型の話、してました。ちょうど、私の血液型はO型で、優はB型です。その時も、優は心の中で、詞に書いてあるようなこと、思ったのかな?

 本当は優に直接訊けば良かったんだけど、優の詞に感動して悔しいやら、ちょっと恥ずかしいやらで、訊きそびれてしまいました。今更訊けないので…、本当の所は分かりません。―


 「もちろんだよ、史香。だってその史香との思い出が、この詞の最初の発想だったんだから。」

優は心の中でそう呟きながら、日記の続きを読み、その時のことを思い出した。


 「じゃあ私も、張り切って曲書かなきゃだね!優に負けないようにしなきゃ。」

「ありがとう。でも、無理しないようにね。」

「分かりました。お気遣いありがとうございます、大野優大先生!」

「ではでは、新川史香大先生!」

2人が冗談を言い合いながら、その日は終わっていった。


数日後、史香が、完成したデモ音源を、サークル室に持ってきた。

 「すごいね、さすがだね史香!いい曲だよ。俺の詞にもぴったり当てはまってるし、何といってもメロディーラインが綺麗だね。ありがとう、史香。」

「優に気に入ってもらえて良かった!頑張ったかいがあった。実は、これ考えるの、苦労したんだよ~。何時間もぶっ続けでピアノ、弾いたりなんかして…。」

「そっか、本当にありがとう。お疲れ様。」

「でも優に喜んでもらえたから、疲れも吹き飛んじゃった!

 それで、お願いがあるんだけど…。一応、この曲のピアノ伴奏の部分と、アコースティックギターの伴奏の部分も、考えてきたんだ。楽譜、見てくれる?」

優は、史香の持って来た楽譜に、目を通した。

 「さすがだね史香。ありがとう。」

「それで、できれば2人で、セッションなんかしたいな~って、思ったんだけど…。

 優、ギター伴奏とヴォーカル、担当してもらってもいいかな?

 それでゆくゆくは、学祭とかで、披露してみたいんだけど…。」

「分かった。史香の望みなら、何でも協力するよ。ただ、俺がヴォーカルで、本当にいいの?」

「もちろん、やっぱり優の詞だし、優に歌ってもらわないと!

 それに、いつか2人だけで、セッションしたいって、ずっと思ってたんだ~。」

「俺も同じこと考えてたよ。やっぱり、気が合うね俺たち。」

「そうだね!」

 そして、2人はセッションを始めた。史香のピアノの腕は抜群で、優は、ギターでそれについて行くのに必死になった。また、優は何度か練習中にミスをしたが、

「大丈夫、落ち着いて。ゆっくり確認すれば、いいからね。」

という、史香の優しい声かけを聞き、持ち直した。

 何度か音を合わせているうちに、少しずつ、お互いの息も合ってきた。(特に、優の成長が著しかった。)そして、2人は、不思議な感覚にとらわれた。そこは、他の人が入ることのできない、2人だけの音の空間であった。史香のピアノ、優のギター、それぞれの音は、他に代わりのない、2人独自の音で、また、その音と音とが重なり合い、オリジナルのハーモニーを、2人は生み出していた。それは、魂の融合、と言ったら大袈裟ではあるが、ともかく、今までに経験したことのない感覚を、2人はセッションを通じて味わっていた。


 「史香とこのまま別れてしまったら、2人でセッションをすることも、なくなってしまうのか…。」

優はふと我に返り、そんなことを思い、悲しくなった。そして、優はその次のページをめくった。


   ※ ※ ※ ※

 ―いよいよ、夏休みに入りました!期間は、8、9月いっぱい!大学生の夏休みって、長いんだね。とりあえず、期末テストも終わり、ホッとしました。

 さて、今日は、優とデートでした。最近は、テスト勉強に追われて、デートらしいデートをしてなかったので、本当に、楽しかった~。まあ、一緒にテスト勉強なんかは、してたんだけどね。

 とりあえず今日1日のおさらい。まず、始めに、映画館に行きました。―


 「なるほど。フランス映画か。史香らしいね。よし、一緒に行こう!」

優と史香は、テストが終わったその日の晩、(この日記の前日、)電話をしていた。どうやら史香は、フランスの映画を、優と一緒に見たいらしい。

「ありがとう、優。この映画、そんなに有名じゃないんだけど、ネットのレビュー見て、どうしても見たくなっちゃった。ちょっとマニアック過ぎて、優は一緒に来てくれるかな?とも思ったんだけど、訊いて良かった~。」

「そっか、俺も映画は好きだから、大丈夫だよ。フランス映画はそんなに見たことないけど、新たな境地を開拓する気分?で見るよ。

 それに、史香が好きな映画なら、どんな映画でも楽しい気分になれそうだからね。」

「またまた~。じゃあ、明日の朝9時に、駅前の金時計集合で、よろしくお願いします!映画の後は、ご飯食べたり、ショッピングしたりして、楽しもうね!」

「了解!」

こうして、2人の1日が始まった。


―優と一緒に見たフランス映画、最高でした!恋愛ものの映画だったんだけど、すっごく感動した!それで、私、恥ずかしいんだけど、途中から号泣しちゃいました。で、隣を見たら…、優も号泣していました。それで私、なんか、可笑しくなっちゃった。―


「優、泣いてたよね?」

「いいや、泣いてないよ。史香の方こそ、泣いてたよね?」

「嘘だ~。だって優の目、今もちょっと赤くなってるよ。

 私は正直に言うね。感動して、途中から泣いちゃいました。この映画、予想以上に良かった~。」

「バレたか。俺も途中から、泣きました。嘘ついてごめんね。ちょっと、恥ずかしかったから…。」

「いいよ。優も感動してくれて、私、嬉しい!」

 2人はその後、映画の感想を言い合った。その日は、真夏の日差しが照りつける、8月最初の日であった。


 ―その後、2人でショッピングに行きました。駅前のショップには、かわいい服やアクセサリーがいっぱいあって、全部、欲しくなっちゃった!でも、財布の中身は限られています…。残念。というわけで、優に感想訊いて、何着か、夏物の服を買いました。8月に夏物って、ちょっと遅い気もするけど、いいんだ。だって、今年の夏は優といっぱいデートする予定だから、服を着る機会、いっぱいあるんだもん。

 あと、優の服も、選ばせて頂きました!―


 「わあ~。これかわいい!あ、でも、こっちの色の方がかわいいかな?優、どう思う?」

「うーん、どっちも似合うと思うけど…。」

「ちょっと、真面目に考えてくれてる?女の子にとって、ショッピングは真剣勝負なんだからね。」

「ごめんごめん、分かった。」

優との初めてのショッピング。史香は、心底楽しそうに、服を選んでいた。優もファッションは好きな方だが、そこは、やはり女の子の史香にはかなわない。

 「あっ、あのネックレスもかわいい!どうしよう、どれにしようか迷うなあ~。」

優は、そんな史香を見て、少し微笑ましい気分になった。

 結局、史香は、一応真剣に考えた優の意見も参考にして、花柄のワンピースや、少し大ぶりの、黒のネックレスを購入した。

 「さあ、次は優の番だからね。優も、何か買いなよ。ファッションリーダーの新川史香様が、優くんのアイテム、チェックしてあげます!」

「えっ、史香はいつから、ファッションリーダーになったの?」

「もちろん、今日からです!」

「何だそれ。

 まあともかく、俺もいいの探すよ。」

優と史香は冗談を言いながら、アイテム選びを始めた。

 「俺さ、新しい靴が欲しいんだよね。」

「なるほど、靴か。分かった。そういえば優って、スニーカーよく履いてるよね?」

「うん。俺、スニーカーが好きなんだ。」

「じゃあ今日は、他の靴にチャレンジしてみなよ。例えば…、デッキシューズとか。」

「なるほどデッキシューズか…。俺、今までスニーカー以外の靴、履いたことほとんどないんだけど、大丈夫かな?」

「大丈夫、優なら似合うよ!私もアドバイスするから、選んでみなよ。」

「分かった。」

 そして優は、ネイビーのデッキシューズを試し履きした。

 「いいじゃん優!これなら今着てるTシャツやカーゴパンツとも合うし、全体的に優のイメージにぴったりだよ!」

「ありがとう史香。俺も、このデッキシューズ気に入ったし、これにしようかな。」

こうして、優は靴を購入した。


 ―その後、私たちは駅近くのレストランで、ランチをしました。イタリアンのレストランで、パスタとピザとを頼んだんだけど、どっちもおいしかった~。

 そして、ランチ後に向かったのは…、ジュエリーショップ!今日は、そこで、ペアリングを買う予定だったのです!―


 「そういえば、私たち、もうすぐ付き合ってから、3カ月だよね~。」

「うん、そうだね。」

再び、デート前日の電話である。

「明日は、せっかくの3カ月記念なんだし、なんか、特別なこと、したいよね。例えば…」

「指輪とか!」

そこで、2人は同じ台詞を同時に言った。2人の息は、この3カ月(弱)で、ぴったり合うようになっている。

 「いいね。じゃあ明日は、ペアリング、見に行こうか。」

優はそう史香に言い残し、その日の電話を切った。


 「いい指輪、あって良かったね!」

ジュエリーショップを出た後、優が史香にそう呼びかけた。

「うん!

 でも、刻印ありだと、やっぱり、商品を受け取るまで2週間もかかっちゃうんだね…。本当はもっと早く、欲しかったんだけど…。」

「まあ、仕方ないね。ゆっくり待ったらいいじゃん。」

「そうだね。」

ペアリングには、「Yu、Fumika」という2人の名前を入れてください、と、店員に注文すると、

「かしこまりました。ただ、それだと商品のお届けまで、約2週間はかかりますが…。」

とのことであった。

 「まあでも、楽しみは後にとっといた方がいいかもね!」

史香は、そう言った。


 ―そして、この日のデートの最後にあった、ほっこりするような出来事を、書いておきます。―


 「ごめん優、今日私、ピアノのレッスンがこれからあるんだ。だから、そろそろ帰らなきゃ。」

「分かった。今日も楽しかったよ。ありがとう、史香。」

「こちらこそ!」

そう2人が言って、帰ろうとした時に、1人のおばあさんが、目の前を横切った。そしてそのおばあさんは、たくさんの荷物を持っていた。

 「ごめん史香、あそこのおばあさん、荷物重そうだから、運ぶの手伝ってあげない?

 もちろん、史香が急ぎなら、俺1人で手伝うから、いいよ。」

「ううん、レッスンまでもう少し時間があるから、大丈夫。私も気になった。じゃあ、手伝ってあげよっか。」

そう2人は話し合い、おばあさんに声をかけた。

 「おや、ありがとう。優しいね~。ところで、お2人さんは付き合っているのかい?」

「はい。」

「そうかい。若いっていいね~。

 それにしても今日は暑いね~。ほら見てごらん。入道雲が、もくもくしているよ。こういう時は、ひと雨来そうなもんだけど、とりあえず、雨は降らなくて良かった。この荷物を運びながら、雨が降ったんじゃ、若いお2人さんでも、大変だろうからね~。ましてや、あたし1人では…。ありがとう、本当に助かったよ。

 ここでもう大丈夫だよ。お2人さん、もしよければだけど、上がってくかい?今日のお礼ということで。」

「すみません、私、この後都合が悪いんです。でも、ありがとうございます!

 …行こっか、優。」

優と史香は、おばあさんが持つにしては多めの荷物を、おばあさんの家まで持ち運んだ。優は、その荷物の中身が気になったが、史香が急ぎであったため、それをおばあさんに訊くことはなく、その場を後にした。

「ごめんね優。急がせちゃって。」

「ううん。仕方ないよ。じゃあ、ピアノのレッスン、頑張ってね!」

「はい!」

 こうして、優と史香はその日のデートを終えた。


 ―今日は、優の優しい一面が、垣間見えた1日でした。私、本当に、優のことが好き。これからも、よろしくね優!

 ところで、あのおばあさん、元気かなあ。ちょっと気になるけど、おばあさんの家まで行くのは、ちょっとおこがましい気もするし…。まあ、またどこかで、会えるかもね!―


 優は、そんなおばあさんとの一幕を思い出した。そして、次のページをめくった。


   ※ ※ ※ ※

 ―今日は、私のピアノ検定の日です。今は朝の5時。緊張しすぎて、こんな早い時間に、起きちゃった。どうしよう、不安でいっぱいだ…。

 でも、絶対に受かりたい検定だから、私、頑張らなきゃ!―


 「ペアリング、してくれてるんだね、史香。」

「うん、そっちこそ、優!」

これは、史香のピアノ検定の、前日の様子である。2人は、一緒にランチをしていた。

「ごめん、私、明日に向けて、練習しなくちゃ…。ちょっとしか一緒にいられなくて、本当にごめんね。」

「いいよ、気にしなくて。それより、明日の検定、頑張ってね!」

「うん、ありがとう!」

こうして、その日は2人は、短時間で別れた。


 ―今から検定の時間まで、ライブ形式で、私の気持ちを、書き綴っていきたいと思います!って言っても、私しか読む人、いないんだけど…。まあ、それはよしとしよう。

 おっと、こんな時間にメールが…。誰かな?

 何と、優からです!嬉しい!で、気になるその内容は…―


 『史香、起きてる?まだ寝てるかな。とりあえず、メールしてみました。着信音で起こしちゃったら、ごめんね。

 今日はピアノの検定の日だね。俺はピアノのことはよく分かんないし、史香の代わりにもなってあげられないけど、史香なら、きっと大丈夫だよ。だって史香は、もともと才能があると思うし、それより何より、あれだけ、ピアノの練習して来たじゃん。だから、史香が、持てる力を全部出し切れたら、絶対に検定、受かると思います!

 ただ、史香は緊張しぃのところがあると思うから、それだけは、気をつけてね。リラックス、リラックス!

 とりあえず、俺は、史香の成功だけを、祈っておきます。

 あと、史香が検定に受かったら、史香へとっておきのプレゼントを贈るから、楽しみに待っててね!そのプレゼントの中身は…、もちろん秘密!受かってからのお楽しみということで!

 何はともあれ、検定、頑張ってください。

 優』


 実は、優の方も、史香の検定のことが気になって、よく眠れなかったのである。優はこういう時、自分のことではないにも関わらず、相手のことを思い、緊張したり、不安になったりする性格であった。また、どうしても当日の検定前の時間に、史香を元気づけたい、そう思い、朝早くにメールを送ったのであった。


 ―ありがとう優。私が緊張しぃって、あんまり人には言ったことはないけど、優には全てお見通しだね。とりあえず、優のためにも自分のためにも、頑張らなきゃ!

 それにしても、プレゼントって何だろう?気になるなあ~。受かってからのお楽しみか。まあ、楽しみにしておこう!


 そして、今から検定会場に向かいます。一応、昨日の晩は、験担ぎということで、カツ丼を食べました。そして、今朝も昨日の残りのカツ丼、食べようかなと思ったんだけど、やっぱり朝からカツ丼はきついので、止めました。

 今は、会場に向かう電車の中です。今日の天気は、雲1つない快晴!良かった、私、雨女じゃないみたい。

 車内を見回してみると、音楽の本とか、ピアノの楽譜とかを見ている人も、ちらほら見受けられます。ヤバい、この人たち、みんなライバルっぽい…。まあ、検定は倍率とかないから、正確にはライバルではないかもだけど…。でも、緊張するよ~。


 会場に着きました。後は、イメージトレーニングして…、本番に備えるのみ!こんな時、優が側にいてくれたらなあ~。でも、優のことだから、心はいつも私と一緒にいて、応援してくれている、はず!そうだ、頑張ろう!―


 そして、史香は検定を受けた。検定は、課題曲の演奏、自由曲の演奏に加え、自作曲の演奏、また指定された音列での即興演奏という順番で、進んでいった。

 史香は検定の間、緊張しっぱなしであったが、何とか自分を落ち着かせ、演奏することができた。そして、検定を終えた史香は、「終わった」という開放感や、「まずまずできた」という達成感に、包まれていた。


 ―ついに検定、終わりました!疲れた~。でも、とりあえず、終わって良かった。それに、自分ではちゃんと演奏できたと思うので、合格は…、できていると思います!それにしても、緊張したよ~。

 ちなみに結果は、1週間後に、郵送で送られてくるみたいです。私、結果を見る時の方が、緊張しちゃうかも。

 それはさておき、今、私すっごく、優に会いたい。優に会って、癒されたい。よし、この足で、家に帰る前に優に会いに行こう!―


 「確かこの日は、史香、

『今から会える?』

ってメールして来て、それでちょっとだけ、話をしたよな…。」

優は、そんなことを思い出しながら、日記の続きを読んだ。


 ―検定の日から、1週間が経ちました。そして、結果は…、

 合格です!

 私、本当に嬉しい!これで、私の夢が、1つ叶いました!正確に言うと、夢への第一歩を踏み出した、自分のさらに大きな夢に、一歩近づいた、そんなところかな。

 今は自宅です。これから優に合格のこと電話して、会いに行きます。―


 「すごいじゃん史香!おめでとう!」

優は電話越しに、史香の合格を、自分のことのように喜んだ。

「ありがとう優。今私、すっごく嬉しい気分。それもこれも、優のおかげだよ!」

「当たり前じゃん!

 それは冗談だけど、俺、本当に何もしてないよ。史香が頑張ったからだよ。じゃあこれから、お祝いしなきゃね!」

「ううん、優のサポートがあってこその、合格だよ。私、心の底から、そう思う。

 じゃあ今から行くから、待っててね。」

「了解!」

 そして史香は、優の元へと向かった。


 「改めて、おめでとう、史香。」

「ありがとう、優。」

2人は、大学のサークル室で落ち合った。

「それで、気になってたんだけど…。

 プレゼントって何?」

「そうだね。合格したら、プレゼントするって約束だったもんね。

 ちょっと待ってね。」

そう言いながら優は、ピアノの前に座った。

「えっもしかして、プレゼントって…。」

史香がそう言い終わるか言い終わらないかのうちに、優は、ピアノを弾き始めた。

 それは、史香が前に好きだと言っていた、今流行りのアーティストの曲、それに2人で作った、「血液型」の2曲であった。優はたどたどしい演奏ではあったものの、一応、史香の前で全て、演奏しきることができた。

 「俺、史香が合格してくれて、本当に嬉しいんだ。それで、合格祝いに、何かできないかと思って…。

 だから、史香のピアノ、勝手に真似しちゃいました!

 検定合格した史香から見たら、笑っちゃうような演奏だよね。ごめんね、こんなことしかできなくて。」

「ううん、ありがとう優。とっても嬉しいプレゼントだったよ。」

史香の目は、合格した喜びと、優のピアノ演奏のプレゼントをもらった喜びとで、少し潤んでいた。優は演奏後、そんな史香の元へ近づき、優しく、史香を抱き締めた。


 ―優のプレゼント、本当に予想外で、嬉しかった。私、思わず泣いちゃった。やっぱり優は、私にとって最高の彼氏です。優と出会えて、優と同じ時間を過ごせて、私、本当に幸せです。これからも、この幸せが、ずっと続きますように。―


 優は少し潤んだ目と共に、日記を読んでいた。

「この時の俺たちは、本当に幸せだった。俺も、この幸せがずっと続きますようにって、願ってた。なのに、どうして、こうなっちゃったのかな…?

 今すぐにでも、史香に会いたい。」

別れ話を切り出された優は、史香への思いを、募らせていた。

 そして、優は残り少なくなった日記の続きを、読み始めた。


   ※ ※ ※ ※

 ―今日は、バレンタインデーです!バレンタインデーとは、女の子が、好きな男の子に告白する日…って、みんな知ってるよね。何でこんなこと書いてるんだろう、私。それは多分…、緊張してるからだと思います…!―


 「はい、私からのプレゼント!チョコレートケーキだよ!」

史香はバレンタインデーの日、そう言って、優にケーキを手渡した。その日はバレンタインということもあり、史香が、史香の地元のおしゃれな店などに優を案内していた。

 そして、その日のデートの最後に、史香は自分の家に少しだけ寄り、「昨日の夜作った」というチョコレートケーキを、優に渡したのであった。

 「ありがとう史香。今日はもう帰らないといけないけど、帰ってから俺、絶対食べるから。」

「約束だよ~優。頑張って作ったんだから、絶対1人で、食べてよね!あと、恥ずかしいから、優1人だけの時に、食べてくれる?」

「分かった。これは俺の部屋で開けることにするよ。家族の他のメンバーにつまみ食いされても嫌だしさ。」

「絶対、約束ね!

 今日は楽しかった!また、私の地元にも遊びに来てね!」

「うん、またね史香!」

こう言って、優はケーキを持ち、2人はこの日、別れた。


 家に帰って来た優は、早速、ケーキの箱を開けた。

「確か、史香は料理が苦手、って言ってたような、言ってなかったような…。でも、史香が俺のために、一生懸命作ってくれたんだから、おいしいに違いない!」

優は心の中でそう言いながら、台所から持ってきた包丁で、円形のケーキをカットしようとした。

 すると、「カチッ」という音が、ケーキの中から聞こえた。

「何だろう?」

優が気になり、ケーキを開いてみると、小さなプラスチックの容器が、ケーキの中に入っていた。

 そして、優がその容器を開けると、小さく折りたたまれた手紙が、その中に入っていた。


 『優へ

 この手紙、気づいてくれたかな?まさか、家族の人と一緒に食べて、手紙、見られたりなんかしてないよね?でも、この後のデートで、『1人で食べるように』って念押ししておく予定だから、大丈夫かな。

 突然の手紙ごめんなさい。しかも、こんな形で渡すなんて、意外だよね?ちなみにこのアイデアは、とあるドラマがきっかけです。優も見てたあのドラマ、名前、書かなくても分かるよね?

 でも、ケーキの中に手紙なんて、ちょっとセンスないかもしれないね。(一応、食べ物だし…)だとしたらごめんなさい。今度、会う時に叱ってください。

 さて、そろそろ本題に入るね。私たち、付き合い始めて約9ヶ月だね。その間、本当にいろいろあったけど、私、本当に優には感謝しています。まず、私と出会ってくれて、私を見つけてくれて、ありがとう。そして、私に告白してくれて、ありがとう。あの頃から、私も優のこと、大好きだったよ。

 優とは、デートでいろんな所に行きましたね。例えば、遊園地!あの時、優は気づいてなかったかもしれないけど、実は私、高所恐怖症だったんだ。でも、今は、優と観覧車に乗れて、心から良かったと、思っています。だって、あの観覧車で、2人の距離がぐっと縮まった、そんな気がするんだもん。

 それから、優と一緒に曲も作ったね。優の書いた詞、本当に良かった!だから私も、作曲しやすかったよ。私の中では、他の誰でもない、優が1番の作詞家です。

 あと、私がピアノの検定を受けた時、励ましてくれてありがとう。優のおかげで、無事合格することができました!緊張しぃな私を支えてくれたのは、優の存在です。優がいなかったら、多分、緊張でミスを連発していたと思います。

 もちろん、優の合格祝いのプレゼント、すっごく感動しました!また、優にピアノ、弾いて欲しいな。もちろん、腕前は私の方が上だけど!

 …さっきのは冗談です。腕前は関係ありません。ただ純粋に、私は、優に祝ってもらえて、嬉しかった。誰か、側にいて私のことを支えてくれる人がいるって、こんなに素晴らしいことだったんだね。私は、優にそのことを教わりました。

 最後になりますが、大野優さん、これからも、こんな私でよければ、付き合ってあげてください。私、本当に、あなたのことが好きです。

 以上!

 PS 私、前に料理は苦手って言ったけど、このチョコレートケーキ、頑張って作った、自信作です!だからきっと、おいしいはず!

 じゃあね。』


 手紙を読み終えた優は、思わず泣いてしまった。

「俺の方こそ、史香に感謝してもしきれない。本当に、俺は史香のことが好きだ。」

そう思いながら優は、チョコレートケーキを食べた。自信作ということもあり、ケーキはおいしかったが、優の涙のせいか、心なしか、そのケーキはしょっぱい味がした。


 ―でも、私、料理はやっぱり苦手…。ケーキ、うまくできたかな…。―


 優は、そこまで日記を読んだ後、あの日もらった手紙を、未だに大切に保管している引き出しの方に、目をやった。

 そして、次のページをめくろうとした時、優は、あることに気がついた。それは、日記の最後のページであった。そのページは、のりづけされており、ページの中身が見られないようになっていた。優は少しその中身が気になり、蛍光灯の下に、そのページを持ってきた。すると、何かが書かれていることは分かるが、何が書かれているかまでは判別できない。もちろん、その形状からして、カッターでのりづけされたページを開けば、見ることができるが…。

 そこまで考えた優は、はっとした。

「これは、史香の日記だ。勝手に覗くのは、やっぱり悪い。今更だけど、これを史香に返さないと。

 …そうだ、史香の親友の、真紀ちゃんに頼んで、返してもらおう。」

そう思い立った優は、優、史香と同じサークルで、史香の親友の、広田真紀ひろたまきに、日記を預けることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る