第四話 『冒険者ギルド』
俺は今、エール街に位置するとある建物の前にいる。
俺の横に並んでいるのは、2人だけだ。
1人は幼馴染みのシャイナ、もう1人は今日知り合ったばかりのフレンドリーなオッサン。
約1名よく分からない奴がいるが、気にしては駄目だ。
……話を戻そう、俺達が今立っているのは、冒険者ギルドの目の前だ。
何でそんな所にいるのかは、数分前に遡る。
*
「「えええええ〜!?」」
俺の「冒険者ギルドって何だ?」って質問に対し、2人は街中に響く様な大声で、叫び声を挙げた。
流石に、近所迷惑だろ。これは……。
「ら、ランスロット……もしかして、本当に知らないの?」
「え?まぁ、そうだが……?」
冒険者ギルドなんて、村にいた時から聞いたことは無かった。
俺の亡くなった父親も、そんな話は一切しなかった。
知る由もないとはまさにこのことだろう。
「冒険者ギルドって言うのは……冒険者が集う場所のこと!」
「そんな、大雑把じゃ分からないな……そもそも、冒険者自体何なのか分からないし」
「冒険者っていうのは……えっと……あんなことやこんなことをする職業のことだよ!……多分」
「いや、待て!?あんなことこんなことって何!?聞いて数秒で既に、冒険者ギルドに対して恐怖抱いてんだが!?」
シャイナの説明に少し困惑する俺に、横から呆れた様子で「俺が説明する」と言って、オッサンが話に割り込んでくる。
どうやら、このオッサンは冒険者について、詳しい様子だ。
「冒険者って言うのはなぁ……各地の大陸を渡り歩き、各地の冒険者ギルドで依頼を受け、それをこなす、言わば旅をする雇われ人みたいなもんだ」
「へぇ……ってあれ?シャイナの言ってた話と違くないか?」
俺は、オッサンの話に感心するのも束の間、シャイナの話と食い違いがあることに気付き、横目でシャイナを見た。
俺の視線に気付いたのか、シャイナは慌てた様子でこう言った。
「多分って言ったでしょ?」
「いや、言い逃れする部分そこ!?」
俺からしたら、シャイナなら「あんなことやこんなこと」について言い訳や言い逃れをすると思っていたが、どうやら違うらしい。
まぁ、オッサンの説明のお陰で、冒険者が何なのかは大体分かった気がする。
なんとなくだったが、冒険者と言うのは、依頼をこなす傭兵みたいなものだろう。
この街の周りのモンスターくらいなら、俺でも簡単に退治できるレベルだ。
そうと決まれば、話は早い。
「それで、その冒険者ギルドってのは何処にあるんだ?シャイナ」
「ああ、それなら私に着いてきて」
俺はシャイナの言う通りに、彼女の後ろを着いて歩いた。
*
……それで、今に至るという訳だ。
案の定、立派という程では無いが、大きな建物だった。
出入りする人達は、皆活気が溢れていた。
ローブを着た女性や、鎧を着た男性等がよく出入りしているのを見かけるくらいだ。
……待てよ。
そうなると、ムキムキのオッサンはともかく……俺とシャイナじゃ場違いじゃないのか?
横のシャイナは、何時もは落ち着いていたが、冒険者ギルドの目の前に来てからは、子供みたいにはしゃいでいた。
「ねぇ、早く入ろうよ!ランスロット!」
「分かったから……そう、急かすなよシャイナ」
俺は、シャイナに軽い態度を取りながらも、恐る恐る冒険者ギルドの扉を開いた。
するとそこには……沢山の冒険者らしき人達がわいわいがやがやと楽しそうに、食事をしている風景が映し出された。
中には、酒を持って踊る冒険者なんかもいたりした。
俺の想像とは全く違うが、これもこれで中々良いのだろう。
見ていて、ホッとする様な不思議な光景だった。
「良い所だな……」
気付くと俺は、無意識の内に思ったことをそのまま口に出して呟いていた。
「そうだろ?良い所なんだよ……ここは」
「ですね……俺の住んでいた村とは違い、なんかこう、落ち着くというか……」
「ああ、わかるぞ。その気持ち……俺も始めてここに来たときは、オメェみたいに一途だったな……」
このオッサン冒険者だったのか……道理でガタイが良い訳だ。
ということは、ステータスの方も、かなり高いのかもな……。
オッサンには悪いが、鑑定スキルでステータスを確認させて貰うか。さっきの仕返しだ。
ガンク・グローリアLv.45
・体力:150/150
・魔力:160/160
・攻撃:190
・防御:163
・魔攻:180
・魔防:155
・俊敏:180
職業:上級剣士
スキル:『攻撃強化:大』『剣の天才』『鑑定』『俊敏強化:中』『魔物狩り』『暗殺者』『属性無効』『自然回復』『無痛』『思考上昇:大』『剣戟』『ソードスラッシュLv.10』『ソードブレイクLv.10』『フレイムソードLv.10』『スラッシュブラストLv.10』『イグニスブレイクLv.10』『アイアンクラッシュLv.10』
えええええ!?
これは、いくら何でも予想外過ぎるぞ……。
レベル45で、ステータスがどれも俺の3倍以上且つ、全攻撃スキルのレベルがカンストしている。
確か、レベルが付く攻撃スキルは上級以上だから……全て上級攻撃スキルってことか!?
(この人、一体何者なんだ!?)
「……ん?どうやら、鑑定スキルを使って俺のステータスを見ちまったようだな……」
「あ、はい……すいません……」
「いや、謝るのは筋違いだ。先に鑑定スキルを使ったのは、俺の方だからな。それと、自己紹介がまだだったな……俺の名前はガンク・グローリア!上級剣士でこの街随一の冒険者だ!よろしくな!」
「あ、はい……え〜と俺はランスロット・カーストです。隣村のハンス村からやって来ました。それで、あっちの連れはシャイナと言います。よろしくお願いします」
俺は敢えて、シャイナの家名は言わなかった。
何故ならシャイナは、村長の娘だからだ。
シャイナがいなくなって、きっと今頃村は大騒ぎだろう。
ここに、シャイナがいることがバレたらせっかく楽しそうにしているシャイナが可哀想だ。
「ハンス村っていうと、十数年前に忌み子が産まれた村か……」
「は、はぁ……そうですが……ガンクさんもよく知っていますね」
「ああ、あの話は有名だったからな。今頃、王都の方でも討伐隊が組まれてるって話だからな……」
「え……?」
どういうことだ?
何故、王都がわざわざステータスALL1の忌み子の為なんかに討伐隊を組むんだ?
「ああ、最近の若いのは知らねぇか……」
俺は生唾を飲み込んだ。
よくは分からないが、どうやら俺の知らない所で俺の命に関わる様なことが起こっているらしい。
一刻も早く、ガンクさんから話を聞き出さないと……。
「ランスロット〜!冒険者カード発行しに行こう!」
「え?シャイナ?ってあっ……」
ガンクさんに話を聞こうと、ガンクさんの方に身を乗り出すも、シャイナが割って入って来て俺の手を掴んで引っ張って行く。
俺は、それに抵抗することが出来ず、遂には受付カウンターの前まで連れてこられてしまった。
「ほら、ランスロット。これに名前書いて!」
「ああ、分かったよ……」
俺はシャイナに言われるがまま、書類に名前を書き込む。
受付嬢は、こちらをニコニコと笑いながら見つめている。
ああ、シャイナのせいで……聞きそびれたな。
名前を書き終わった俺は、カウンターへと書類を差し出した。
「え〜と、ランスロット・カーストさんとシャイナ・ハンスさんですね。これで間違いないですか?」
「はい、間違いありません!」
「では、暫くお待ちください」
シャイナは相変わらず元気らしい。
しかし、俺は先程ガンクさんに話を聞きそびれたことにより、冒険者カードどころの話じゃない。
「カードの発行が完了しました!」
そう言って受付嬢は、カードを俺とシャイナに手渡した。
ランスロット・カースト
・年齢:17歳
・職業:下級冒険者
・冒険者ランク:F
成程、冒険者カードってこんな感じなのか……ってあれ?
これって、シャイナの家名が普通にバレたりしないのか?
まぁ、いい……とりあえずガンクさんに話を聞きに行こう。話はそれからだ。
「シャイナ!俺は、ガンクさんの所に言ってくるから、シャイナは宿を探してくれ!」
「え?あ、うん、分かった!」
俺は、シャイナの返事を聞くと同時にガンクさんのいる場所へと走って言った。
一刻も早く、ガンクさんから話を聞くために。
ステータスAll1の忌み子の俺がチートな件について 〜チートスキルで世界最強に!?〜 深海 新 @sinkai-sinkai
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