第1話 光の巨人
光の巨人。
かつて地球に飛来した怪獣や敵性宇宙人を倒し、平和を守ってきたという伝説の存在。しかしその存在は、世間には一切公表されなかった。多くの目撃者がいたにもかかわらずだ。
ある時を境に、地球から怪獣や敵性宇宙人は消え、光の巨人たちもまた消えた。
光の巨人は、高次な情報生命体、または思念体と呼ばれるものだ。肉体という概念は持たず、膨大な光のエネルギー・情報として宇宙に漂うものである。なぜ、その彼らが地球を守ってくれていたのか、それは誰にもわからなかった。
光の巨人は肉体を持たないが故、怪獣たちなどに物理的に干渉することはできない。そこで彼らがとった行動は、人間の肉体を借りるということだった。
人間を宿主とし、膨大な情報により強制的に身体の構造を変化させ、巨大化するのだ。そしてすべてを圧倒する強大な光のエネルギーにて、怪獣たちを倒す。
弱点はある。巨大化といってもせいぜい50メートルが限界だった。それ以上は宿主が崩壊してしまう恐れがある。ちなみに、逆に小さくなることも可能だった。そして一番の問題点は活動時間。宿主の身体を改変し、かつ巨大な怪獣を倒すエネルギーを維持するのは、3分ほどが限界であった。それ以上は、肉体を消失してしまうことになる。宿主もその生命を失うことになる。
また、宿主に相当な負荷がかかる。何度も何度も”変身”することはできなかった。一度変身すれば、最低でも一日は光のエネルギーを充填しなければならなかった。
――これらの失われた情報を、”彼”がいかにして入手したというのだろうか。
それは”彼”が唯一、人工的に生み出された光の巨人だからである。
人間たちはなんと、光の巨人を捕縛することに成功した。ある強大な怪獣に倒された光の巨人を、冷凍し回収。そして”解析”したのである。
そして人間たちは膨大な情報データと蓄積された光エネルギーにより、光の巨人を作り出したのである。その”宿主”として選ばれたのが”彼”――プロトゼロであった。
彼はもともと死刑囚である。身寄りもない彼に白羽の矢が立ち、地下の研究設備に送り込まれることとなった。実験は繰り返されることになる。それにより、彼は記憶を失い、感情を失った。薬物により身体も弱っていた。
いまや研究設備は再来した怪獣たちに壊され、ゼロは途方に暮れるしかなかった。しかし。
自分の使命は何か。繰り返し聞かされた機械音声が頭の中に流れる。
再び地球が脅威にさらされた時、戦うことである。
迫りくる怪獣。ゼロは決意した。この脅威に立ち向かえるのは、自分しかいない。
歯を食いしばり、”彼”は変身する。命を削り、変身する。全身に走る激痛。それは不完全な巨人だった。光はなく、にぶい光沢を放つ、くすんだ銀色の巨人。
巨人はなんとか立ち上がり、そして構えた。
倒すんだ。怪獣を。おれが、倒すんだ。
「じゃまだ、どけーっ!! ダイナマイト・キック!!」
地面から何か小さなものが飛んだと思うと、なんとそれは怪獣を吹き飛ばし、粉々にしてしまった。
「よっしゃぁぁっ! 次、次ーっ!!」
――。
プロトゼロは、その場に石の彫刻のように佇んだ。
「……あれっ?」
怪獣列島 るーいん @naruki1981
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