第11話 戦いの終わり
「アカツキィどういうことか説明しろ?」
「やだ。誰がテメェなんかに説明するかよボケナス」
「ひどい」
「じゃあ僕だったら説明してくれます?」
「大人しく捕まってたらそいつが鍵開けてくれて、交換条件に首領の殺害出されたから受けた。一石二鳥だろ」
「扱いの差」
「うるせぇボケナス」
「お前ら仲良いのか悪いのかどっちなんだ」
帰り道、アカツキ、アマツキ、セレス、エノクと青年で歩いているところ、アカツキとセレスによる罵り合いが始まった。
終いにはお互い武器を持ち殺し合いに発展しそうだったのでエノクとアマツキで必死に止めたのだった。
「アルハードさんが首を長くして待ってますよ」
「アルハードっつーよりアリシアがじゃね」
「アリシア……?」
「アカツキ。お前は我が騎士団の団長ぐらい名前を覚える気はないのか」
「悪いな」
「開き直るなよ」
青年は終始苦笑いのまま、四人より一歩下がって彼らを見ていた。
「レグ」
アカツキがふと振り返り、レグを見つめる。
「……なに?」
「お前の新しい仕事、俺が探してやるから安心しとけよ」
「は……?」
「金稼げるところ無くなったろ。代わりにいいとこ紹介してやる」
「……」
把握しきれてないレグはあっけに取られていた。
なぜ年下の小さな少女に、と思うより先に、どうしてそこまでしてくれるんだという疑問。
自分はただ鍵を開け、環境を変えたいと告げただけなのに。
「どうして」
「おいおい、このクソ狐に任せたらロクなとこ紹介しねえよ」
「うるせえハゲ」
「待て、俺はまだハゲじゃねえ」
「まだ…?ということは将来」
「ハゲねえよ」
「レグさんはしたいこととかありますか?」
アマツキが振り返り、レグに訊ねる。
突然聞かれて考え込むレグは、何も考えずひとつのことを告げた。
「……パン焼きたい」
「よっしゃ決まり!」
「おー、いいねぇ」
騎士団寄宿舎に到着した。
アマツキとエノクと別れ、3人になった。
「アカツキはどうして殺し屋をしてるの?」
「またそれか。俺には殺したいやつがいる。そいつをいつか殺すためだよ」
淡々と告げるアカツキに、レグは目を丸くした。
殺したい奴がいる。
その言葉はこの小さな少女から放たれ、実際、アカツキの目は復讐に燃えていた。
そこまで殺したい相手とは誰なのか。レグにはわからなかった。
「さあ俺の家だ。マイハウス!アルー!!」
嬉々として扉を開け、家に飛び込んで行くアカツキ。その背中を、セレスが見守る。
「……あの。……アカツキは……」
「ああ、あいつ。あいつさ、お前らの組織みたいなところに、親父さんを殺されてるんだ。」
どこか遠くを見て話すセレス。
「じゃあ……」
「お前らのとこと比べたら、お前らのほうがまだ可愛げがある。俺でもあそこに手を出すのは嫌だ。火炙りだったんだ。あいつは辛うじて親父さんに助けられ生きてるが、火傷は消えねえ。消そうとしてねえのもあるが、あれは一生モンだろ」
目を細める。「可哀想にな」
レグも頷いた。
牢屋で始めて彼女を見たとき、目についたのは火傷だった。
髪で隠しているものの、左頬にあるその肌は赤黒く変色し、血管も浮き出ていた。
美人の部類に入るであろうアカツキのその美しさを消してしまっているのは、間違いなくその火傷だった。
「あれ、顔だけじゃねえんだ」
「え……?」
「左半身全部。胸も腕も腹も足も、左側半分はああなんだ。一度だけ、小さい頃あいつが死にかけた時に、脱がせたことがあってな。」
見ていてこっちが泣きそうになったよ。
セレスはそう告げ、中へと入った。レグも続く。
「お帰りセレス。話は聞いとうよ、そっちのがレグくんやね」
玄関先でメガネの、髪がボサボサのアルハードが出てくる。
目の下に隈があるのは、寝ていないからだろうか。
「ただいま。アカツキは?」
「俺に説明してすぐ寝たばい。疲れとったっちゃろ」
「そうか。」
部屋に上がる。
リビングでは青白く光る機械が3つ並んだ机があり、1番大きな机にはサンドイッチが入ったバスケットが置いてあり、2つほどなくなっている。
「お邪魔します」
「ええよー。そこのサンドイッチは好きなだけ食べり。申し訳ないっちゃけどソファで寝てもらうよ。仕事は明日紹介しちゃるけんね」
「えっ泊まっていいんですか?」
「あんたの家、包囲されとるよー」
アルハードがニコニコと笑いながら機械のひとつを指差す。
そこにはたしかに、レグが住んでいた家が映っており、その家を囲むように黒服の男が数人立っていた。いったいどうやって映しているのだろうか。
「あの家は捨てりい。じゃないと、殺されるよ」
レグは言葉に甘えることにした。
死ぬわけにはいかないのだ。
そのうちセレスも部屋に行き、アルハードも寝てしまった。
リビングのソファに横になり、眠るレグは、珍しく、良い夢を見ていた。
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