第41話

 朝起きると母親は出勤したらしく、リビングのテーブルに置きがきがあった。その中身を流し読みし、ほどほどに受け取りながら昨日の残りを温める……


 ご飯派の僕は毎朝インスタントでも味噌汁を作る。味噌汁がないと朝、という感じがしないからだ。

 置きがきをゴミ箱に投げる。縁に当たって弾かれてしまい、結局拾い入れることになるついでにテレビの電源を入れる――


「痴漢冤罪って大変だな……」


 そんなことを言いながら出来上がった味噌汁を飲み、温め終わったご飯を口に運ぶ。


 まあ、いつもの朝だった。ここまでは――



 ちなみに、痴漢という犯罪は存在せず、強制わいせつ罪、もしくは迷惑行為防止条例違反という扱いになる。強制わいせつ罪は親告罪だが、迷惑行為防止条例違反は非親告罪なので注意が必要だ。(そこら辺は検索してください)


 *


「あの、何してるんですか?」


 春香ちゃんを迎えに行くために乗った電車。

 おっさん(失礼)がうちの制服の女の子のお尻を触っていた(うらやまけしからん)。


 有り金全部FXで溶かしたような顔しながら連れて行かれるおじさん。それを見ながら、僕も痴漢プレイしt……そういうのはダメだな、と感じる。

 事情聴取のため時間を少し取られ、改札を出る頃にはいつもより30分ほど遅れていた。


「遅いですよ!何してたんですかセンパイ……」


「何ってナニって言われても……痴漢がいたから駅員さんに引き渡したんだよ」


「ああ、センパイにもそういう趣味があったんですね……示談で済んでよかったです」


「話聞いてた……?僕は引き渡した側!引き渡されてないから!」


「あ、すいません。てっきり……」


「てっきりしないでね?そういう趣味がないとは言わないけど……」

 あ、つい本音が。


「うゎ……早く行かないと遅刻しちゃいますよ」

 ちょっと反応してスルーするのやめてください。こころがいたいです。


 ――前途多難だな、これ。

 だいたい僕が悪いけど。

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