第40話

 まったく、僕の周りの女性はまともな人がいない……そう思いながら風呂に入る。


 ――やっぱ風呂は良いなぁ。

 湯船に浸かり、なにも考えずにぼーっとするのも良し、何か考え事をするのも良し、体を温めると本当に幸せな気持ちになる。


 *



 ガラガラッ


 本当に幸せだぁ……一生風呂に浸かってたいなぁ……



 ……ん?



「あの、えっと、とりあえず出ますね」


「もぉ、親子なんだから遠慮しないの♪」

 何言ってるのこの人?


「は?出てけ」


「そんな言葉遣いをするように躾けた覚えはありません」


「出て行ってくださいお願いします」


「嫌です♡」


 ……丁寧に言ったのに話が通じない人だ。しょうがないから俺が出て行くか――


 *


 気持ちの良い風呂の時間を邪魔されて非常に不機嫌になる僕。

 ツイッタでも見るか、と携帯のロックを解除するとLINEに通知が来ていた。


 滅多に通知の来ないLINE。どうせスパムかなんかだろ、と思い開くと――


 春香ちゃんだった。

「今日はありがとうございました、花飾り大切にします」

 そうメッセージは告げていた。

 律儀な子だな、と思うと同時にすごく嬉しくなる。

「喜んでもらえて本当に良かった」

 と返信する。ああもうかわいいなぁ……


 LINEを返信するのに夢中になっていた僕は背後から近づいてきた母親に気がつかなかった。


 気がついたら――


 個人の中身を盗み見られていた!(某探偵アニメ風)




「イ、イマノミマシタカ……?」

 カタコトになる。


「見ちゃった♡まさか涼太にもねぇ……♪」




 ――終わった。何もかも。


 *


「で、どういう子なの?その春香ちゃんっていう子は」

 根掘り葉掘り聞くのやめてください。そして強制なのもやめてください。息子の僕は泣きそうです。


「一言で言えば……完璧、かな」


「かわいい、勉強ができる、家事もできる、お嬢様」


「それはハイスペックね」


「それにかわいい」


「さっき言ったわよ、それ。なんでそんな子が涼太に……ねぇ?」


「あの、脅したりとかそういうのはしてないですからね?信じてください」


「息子と言えど信用できないこともあるのよ……」

 ――あなたの中での俺はなんなんだ……?


「だってただのオタクよ?それもキツイやつ。そんなに友達も多くない方だし、どちらかというとあんまり話さない。面白いけれど」

 僕の闇みたいなところほじくるのやめてくださいしんでしまいます。


「その、男避けとして付き合う"フリ"をすることになったんだよ……」


 少し黙る。


「いい?ちゃんと聞きなさい。彼女は涼太に好意を抱いてるわ……それはそのLINEからも、フリを頼んだという行動からも分かるわ」


「はぁ」


「だから……大事にしなさいよ」


「はいはい」


 ……めんどくさいなぁ。




「あと、時間がある時に紹介しなさいね」


「え?嫌です」


 即答した。

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