第39話

 はあ、緊張した……


 彼女を送り届けた後、自分の家へと帰る。


 女の子、それも美少女に贈り物をする日が来るとは思っていなかった……


「これも運命ってやつか……」

 くっさいことを言いながら一人で笑う。


 そんなこんなで彼女へとプレゼントを贈る、という作戦は成功し僕は有頂天になっていた。少なくともその時は――


 *


 ――家に、電気が付いている。

 戸締りをして、電気を消して出たはずだったのだが……


 もしかして:空き巣


 と、とりあえず棒の準備をしないと……

 棒なんかないんだよなぁ……

 どうっすっかなぁ……


 とか考えているうちに、玄関に着く。

 音がしないよう、静かに鍵を開けると――


 いた。


「うわああああああああ!殺ってやる!殺ってやる!」

 と叫びながら飛びかかる。が、咄嗟に気がつき、手を止めた。


「取り乱しました、ただいま」


「おかえり、涼太」

 ――母だった。


 *


「だってさ、消したはずの電気が付いてるんだぞ?誰だって泥棒とか空き巣を疑うでしょ」


「いや、まずは親を疑いなさいよ……」


 はい、すいません。

 息子は捻じ曲がってしまいました。


「それにしても土曜に外出って珍しいねぇ……なんかあったの?」


「いや、ちょっと買い物に行っただけだよ」

 ――言えないよなぁ……それも親に……


「あっそ。彼女でも出来たかな?と思ったけどそんなわけないわな(笑)」

 ……なんかすいません。


「とりあえず家に帰るなら連絡してくれ。それなりに準備とかあるし」


「ん?棚のエロ漫画とかエロゲーとかしまうのかな?」


 ――マジでやめてください。見ないでください。


「最近はどういう二次元の女の子が好きなのかしらねぇ……前は黒髪長髪の清楚系だったけど……」


 マジで勘弁してください。なんで僕の嗜好を知ってるんですかね???


「なんで知ってるのかって顔してるでしょ……それはね、親だからよ」


「じゃあ勝手に部屋覗くのはやめてくれ」


「それはできない相談ですねぇ〜♪」


 ……女には勝てないのが僕なのかもしれない。そう思った夜だった。


 覗くのは本当にやめてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る