第37話

「で、ですね僕は一つ言いたいことがあります」

 ショッピングモールへと向かう途中、彼女に話しかける。


「なんですか?愛の告白ですか?」


「いや、そうじゃない」


「じゃあなんですか?」


「来るのがちょっと早くないかなって。これでも結構心配してるんだよ」


「ん……わかりました。五分前ぐらいで良いですか?」


「そうしてくれると助かる」

 ――最近はちゃんと話せてるな。僕も進歩したってことかな……


 と考えつつ、自動ドアを通る。


「えっと、ハラダ電気はっと……」


「こっちですよセンパイ」

 手を引かれる。なんか恥ずかしいな。


 *


「わぁ……いっぱい種類あるんですね」

 家電量販店の電気剃刀売り場。まあ、量販店なので色々と種類があるわけなのだが――


「なんでこんなに種類があるんですか?」

 いや、そりゃ量販店だから……という当たり前の答えを飲み込みながら答える。


「まずメーカーが違う。その中でも刃の枚数とかで上位モデル、下位モデルがあるんだよ」


「へえ、そうなんですか……自分ではこういうの余り見に行かないので勉強になります」

 勉強になったようでなによりだ。


「で、僕はこれを買いに来た」

 予算とレビューと信頼を評価した結果、Panasonicのラムダッシュを買うことにしていた。


「ここだとネットの値段より高い場合にポイントつけてくれるから交換部品とかを買う時に楽なんだ」

 ……あまり興味がなさそうだ。こういうことに関しては女の子ってみんな同じ反応をするのか気になる所だけど。


 テキパキと話をつけ、目当てのモノを買う。

 もちろん替え刃も


 *


「センパイってもっと売り場で悩む人かと思ってました」

 ――そんな優柔不断に見えるのかな?


「今、優柔不断に見えるのか――とか考えてたでしょ」

 やめて、心の中読まないで。


「少なくとも私にはそう見えてましたけど……そうでもないんですね、少し見直しました♪」


「あ、ありがとう」


 昨日、ネットを見ながら悩んでいたことは黙っておこう……

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