第36話

「あーっ!ちこくちこくぅ〜!」


 ……なんてことにならないように、目覚ましを三つセットしていた僕は、なんとか目標の時間に……



 起きられませんでした。



 ねぇ?バカなの?死にたいの?ってツンデレキャラに絶対言われてるよ今。

 まさか三つとも無意識に止めてるとは……自分でもびっくりしたよ!本当に!


 まあ、無能な僕の余裕を持った時間設定のおかげで、まだ約束までは時間がある。慌てずにゆっくりしよう……



 あああああ!味噌汁煮立ってるぅぅぅう!


 *



 慌ただしい朝をなんとか乗り切り、待ち合わせのいつもの駅へと向かう。

 前は本当に遅刻しかけたので(五分前に着いてましたけど!)、一五分前に着く電車に乗り込む――


 春香ちゃんはもう来てるのだろうか。


 と、そんなことを考えていたらすぐに着いてしまった。

 時間の感じ方ってすごいアバウトなものなんだな……


 *


 いつものように改札を出ると――



 やっぱりいた。


 一五分前なのにもういるって……

 いったいいつから待っていたのだろうか。オラ怖くなってきたよ。


 とりあえず行くか――


「おまたせ、待ったよね」


「あ、センパイ!そんなに待ってませんよ♪」


 ――"そんなに"ってどれぐらいなんだ、と疑問に思う。

 怖いが聞いてみるしかないだろう……


「ちなみに予定の何分前にはここにいたの?」


「え、えっと……二十分前には……」


 早すぎィ!自分、尊敬して良いっすか?


「そんなに早く来なくても……絡まれたりしたら面倒じゃない?」


「そういう時はセンパイが守ってくれますよね?」




「――ああ、僕の大事な"カノジョ"だからね」


 笑顔から一転、少し顔が赤くなる彼女の手を握り、いつものようにショッピングモールへと向かう……



 こういうのも悪くない、かな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る