第20話

「今日はありがとうございました、助かりました」


「いや、いいよ いい気分転換になったし」

 ――荷物で筋肉痛になりそうだけどな!


「じゃあこの辺で、今日は楽しかったです。また機会があれば――」


「遅いから送ってくよ。荷物も多いし」


「ふぇっ?」

 気の抜けた声。その声の主はもちろん――


「い、い、いや、そんな……悪いですよ……」

 彼女だ。珍しく慌ててるな……

 と、ここで自分の言ったことの重大さに気づく。


「でももう暗いし何かあったら僕の責任だからね」

 恥ずかしさを隠しながら押し通す。


「じゃ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」

 少し俯き気味の顔は気持ち赤く見えた。


 彼女の家はこの駅から3駅、そこから歩くらしい。

 とりあえず電車に乗る。会話がない……


「あの、センパイはなんで今日付き合ってくれたんですか?」

 小声で聞かれる。


「強いて言えば青春を歩みたくなったから……かな?」


「なんですかそれ」と笑う彼女。

 ――それは今日一番輝いて見えた。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はぇ〜、すっごい大きい……」

 ただただ驚く。


「そうですか?確かに普通よりは大きいですが……」


「いや、結構大きいと思うな。掃除大変そうだ」


「まぁ、確かに大変ですね……」

 手伝うよ、とは口が裂けても言えない。


「今日は色々ありがとうございました。本当に楽しかったです」


「こちらこそつまらないって言われなくて良かったよ。それじゃ、また生徒会で」


「おやすみなさい」


「おやすみなさい」


 ――色々あった1日だったなぁ。

 なにより彼女の滅多に見せない一面も見れたし……

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