第6話 夢
「悠さんのやる気が出てきたということで、あのコーナーいってみましょう!!」
「急にいつものノリみたいな感じ出されても、俺達今日会ったばっかりだからな」
「ノリが悪いですね」
「趣旨のわからないコーナーは質が悪いからな」
過去の経験からいい予感などは全くしていなかった。
「それで、あのコーナーって?」
「それはもちろん、暴露大会です!!」
おもちゃを目の前に、はしゃぐ子供のようだった。
「暴露大会ってあんまり知らないもの同士でやって楽しいのか?」
「親睦を深めるという意味ではもってこいです。お互い素直に質問に答え合う、仲が深まりそうじゃないですか?」
「それは暴露というより問答というのではないか?」
「何でもいいんですよ!!」
何でもいいのか・・・・・。
「私がJKなのは悠さんがとても知りたそうにしていたので、仕方なく話しましたが、悠さんが何歳なのかは聞いてません」
「俺が質問する前に自分から率先して話していたけどな・・・・・」
「細かい事はいいんです。それより今は悠さんの年齢です!」
「20歳の大学生だが?」
「お酒も煙草もいけるお年頃というわけですね」
「酒にも煙草もあんまり興味はないがな。酒はたまに飲むぐらいだな」
「『煙草吸ってる俺かっこいい』みたいなのはないんですか?」
「流石にそんな痛々しい大人になってねーよ」
「歳が違うと先に大人になってしまうんですね」
「それはしょうがないだろ。一緒だからっていいものでもない」
違う時間を生きてるからこその想いもあるだろう。
「私がはたちになったら、一緒にお酒飲んでくださいね」
「俺でよければ喜んで」
「約束です」
こうして沙夜との約束事は増えていく。
「次は悠さんのターンですよ」
「いつの間にターン制になったんだ?」
「今からです。そうでもしないと悠さんからは中々質問してこなさそうなので」
「・・・・・・流石」
沙夜はこの短時間に俺の事をよく理解していた。
「何かありませんか?」
「んー・・・・・」
面と向かってこう尋ねられると、意外と出てこなくて思い悩む。
「何もないんですか?」
「いざとなるとなぁー・・・・・。あ、そういえば」
「何ですか何ですか?」
なんでそんなに質問されたいのか俺にはわからなかった。
「将来の夢とかあるか?」
「悩んだ割に普通の質問ですね」
「沙夜にだけは言われたくないけどな」
「むぅー・・・・」
不満そうな顔をしても事実なのだから仕方がない。
「ただなんとなく聞きたいとかじゃなくて、人の夢を聞くのが好きなんだよ。
俺には明確な夢も目標もないから、夢があるだけですごいと思うし、尊敬してしまう」
「そんな大したものではないですけど・・・」
「聞かせてくれ」
俺自身は諦めてしまった希望を俺に見せてくれ。
「私は絵を描くのが好きなので、それが将来の仕事に活かせたらと思っています」
「ほー。今はないのか?」
「残念ながら持ってきてないですね」
「また見せてくれないか?」
「いいですよ。約束ですか?」
「あぁ、約束だ」
「はい!」
「もしよかったら悠さんを被写体に描いてもいいですか?」
「まじで?大変じゃないか?」
「練習にもなるので私も助かります」
「なら頼もうかな」
「約束です」
「悠さんに夢はないんですか?」
「あったのかもな。全部無理だとわかって諦めてしまったけど」
「どんなのがあったんですか?」
「色々あったけど、小説家が一番本気で目指していたかな」
「小説家・・・ですか?」
「そうそう。文章ひとつであんなに色んな事を表現できることがすごいと思って、憧れてたな」
「なら―――」
「でも才能も努力も何もかもが足りなくて、挫折してしまったんだよ。
だから沙夜は本当にすごいと思う。俺みたいに諦めずに頑張ってほしいとも思ってるよ」
「あっ・・・・・・・」
返す言葉を見失い、言いかけた言葉を遮る沙夜。
また俺達の間に静けさが返ってくる。
先程よりももっと雨音が弱まったのがわかる。
そろそろこの時間も終わりが近づいてきた。
「もう終わったことだから俺自身は気にしてないから気にするな」
落ち込んだように考え込む沙夜の頭を撫でながら言葉をかける。
「では、こうしましょう!!」
急に立ち上がり、目を輝かせながら俺の方を見る。
「私と一緒に小説を書きませんか?」
「は?」
どういった了見なのかわからなかった。
「小説を書くのは自由です!悠さんが小説を書いて、私が挿絵を描きます。OK?」
「OKじゃねーよ。なんで急にそんな話になる」
「私が読んでみたいからです」
「・・・・つまんねーぞ?」
「いいですよ。つまらなかったらつまらないと罵ってあげます」
「ひでぇな。・・・・・・まあ、書いてみるか」
「はい!約束です!」
「おう・・・・」
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