第4話 約束

「悠さんは見た目と違うところだらけで、中々面白いです。ギャップ萌ってやつですね」


「そうか?」


そんなことを言われたのは初めてかもしれない。


「はい。話していくと色々知れて楽しいです」


「人を謎解きみたく言うな」


「ミステリアスなんですよ。もっと悠さんの事教えてくださいね」


「今度な」


「約束ですよ?」




「約束って言葉好きなのか?」


「好きですよ。なんか素敵じゃないですか!」


「守られないことの方が多いけどな」


「それでもいいんですよ。その分、守ってもらった時が嬉しいので」


照れ臭そうに初恋を語るかのような初々しさがあった。


「なので、いっぱい約束しましょう」


「俺は守らない方だと思うぞ」


実際、今沙夜としている約束も絶対に守ろうと思ってしていない。

だた、口実として先延ばしとして、『約束』という言葉を使っているだけだ。


「それでもいいんです。いつかきっと守ってくださいね」


「簡単な内容だったらな」


「約束ですよ?」


「あぁ、約束だ」





「それで、私がここにいた理由でしたっけ?」


「そうだ。夏休みに女子高生が一人でいるような所じゃないだろ」


「私ここが好きなんですよ。他の通りとここだけ違う気がしませんか?

 ここだけ時間が止まっているような」


「ッ―――――!!」


俺が感じていたものと同じことを感じる人がいることが少しだけ嬉しかった。


「ニヤついてどうしたんですか?変なこと言いました?」


思わず表情が緩んでいたようだ。


「俺と同じ価値観の奴がいたことが嬉しくてな」


「悠さんもですか!?」


「ああ。だからここの近くを歩いていたんだ。周りと仲良くしているつもりではあるんだが、

 上手く馴染めていない気がしてな。ここに来ると、落ち着くんだ」


「わかります。私も友達といるよりここで一人でいる方が楽だと思っちゃうんです。

 なんか周りから浮いてるかなーとか思っちゃいます」


「見栄張らなくていいんだぞ?実際は友達いないんだろ?」


「とことんまで失礼ですね!!!」





「私にも友達はいます。まあ、親友と言えるのは一人だけですが」


「そんなもんだと思うぞ。ポンポンいても困るしな」


「はい。でも、ここで『一人』よりもここで『悠さんと二人』の方が楽しいです」


「・・・・・・・はいはい」


「照れてます」


「照れてない!」


本人は意図せず言っているのはわかってはいるが、

こちらが恥ずかしくなりそうなセリフを恥ずかしげもなく言うのやめてくれないかな。



「意外と照れ屋ですね」


「あんな恥ずかしいセリフを恥ずかしげもなく言う沙夜の方がおかしい」


「本心だからしょうがないじゃないですか」


「だから・・・・・」


これ以上言っても無駄だと言うのを止めた。

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