第2話 違和感

「こんな可愛いJKと話す機会なんて早々ないですよ!早速幸せにしました!」


自分から可愛いとか言っちゃうのかよ。確かに自分で言えるほど可愛いけどな。

それにJKブランドとか反則級のコンボアタックだな。


「残念ながら妹がJKだよ」


「ふっふっふ。家族はノーカンです」


「何のカウントだよ・・・・・」


自然な自分を出してることに気づいて、少女に関心して笑ってしまった。


「ああ!何笑ってるんですか!?」


「別に何でもねーよ」


本人には言わないでおいた。




「ところで、えーと・・・・名前教えてもらってもいいですか?」


「ああ。悠(ゆう)でいいよ」


「悠さんですね。私は沙夜(さや)です。沙夜ちゃんって呼んでもいいですよ!」


「・・・・雨が止むまでだけどよろしく、沙夜ちゃん」


「・・・・・・よ、よろしくですっ!」


少し戸惑ったような返事が返ってきた。


「自分で提案しといて照れるなよ」


「うるさいです」





「それでお前はなんでこんな所にいたんだ?」


「名前・・・・・」


「えっ?」


「私は沙夜です」


最初は「何を言ってるんだ?」と疑問符を浮かべたが、「ああ、呼び方か・・・」とすぐにわかった。


「あー・・・・、沙夜はなんでこんなとこにいたんだ?」


ただでさえ大きな目が、大きく見開いた。どう見ても「意外」と言いたそうな顔をしていた。


「変なこと言ったか?」


「いえ、少し意外でした。もっと鈍いのかと思ってました」


「鈍感だと思っていたなら、もう少しわかりやすく言ってほしかったな」


俺は鈍感ではない。分かっていても恍けたりするが、それは面倒なことに首を突っ込みたくないだけの回避行動だ。

所謂、『スルースキル』が長けているのだ。


「こういうことは、言わなくてわかってもらえた方が嬉しいので。少し幸せになりました」


「俺には分からない考えだな」


言葉だけ聞けばとても胡散臭い考えで信用などできないが、彼女の表情が本当だと物語っていた。


――――それぐらい無邪気な笑顔だった。




「それで、なんでなんだ?」


「そうですねー。しいて言うなら暇だったからですかね」


的を射た返しではなく、アバウトに答えられた。

何か裏があるのか、はたまたただの馬鹿なのか・・・・。


「夏休み真っ只中で、女子高生が暇で廃墟近くをうろつくとか・・・・悲しい気持ちになって来たよ」


「失礼ですね!?別に友達がいないわけじゃないですよ?」


「無理しなくていいぞ」


「ホントのことです!!こんなにもコミュ力のある可愛い私が友達できないわけないじゃないですか!」


「コミュ力(笑)。最初の会話からしてコミュ力があるとは思えないぞ」


「あれはただ―――」


「いい天気ですね?」


「うっ」


「元気にしてましたか?」


「・・・・・・・・・・・悠さん性格悪いですね」


ここぞとばかりに攻めると、面白いぐらい素直にへこんでくれた。

黒歴史を掘り返されたみたいな反応に俺は笑いを堪えられなく、「くくっくっくっ・・・・!!」と腹を抱えて笑った。


「・・・・・・・・・」




一通り笑い終えた俺は落ち着きを取り戻す。俺が笑っている間、終始冷たい目線を俺にぶつけていた。


「まあ、冗談は置いておいて―――」


「冗談で私は傷つけられました」


「あんな面白いこと言う沙夜が悪い」


「私は本気でした」


「だから面白かったんだよ」


残り香に負けそうになり、「くくっ」と笑う。


「まだ笑うんですか!?」


「悪い悪い、そう怒るな」


「本当に失礼ですね」


中々彼女の機嫌は戻ってくれそうにないので、会話で気を紛らす作戦に変更した。



「ここら辺ってよく来るのか?」


「上手く話を逸らそうとしたって駄目です。私は怒ってますよ」


「悪かったよ。今度甘いものでも奢るから」


「しょうがないですね。心の広い私はそれで許してあげます」


「おう・・・・」


適当に口から出たあやしだったが、効果はてきめんだったようだ。

流石にちょろ過ぎて、心配になった。


「約束ですよ!!」


「機会があればな」


「私が作ります!」


「・・・・・・・・」


どんだけ必死なんだよ。ちょっと引くわ。




「口実で私をデートに誘うなんて・・・・悠さん実は、プレイボーイですか!!??」


「俺がプレイボーイという結論より自分がちょろいって自覚しようぜ」


「女の子にちょろいとかひどいです!私の攻略は大変なんですよ」


「甘いものあるからウチ来るか?」


「そんなものに釣られませんよ。・・・・・・・・やっぱり行ってもいいですか?」


「ちょろっ!!」



「乗ってあげただけですよ」


「それはそれは」


「信じてませんね!?」


「信じる要素がなかっただろ」


「では・・・・・」


意味あり気にニヤついた少女は一息ついた後にこう言いだす。


「今私お買い得ですよ。どうですか?」


「いや、いいわ」


「えっ・・・・・。あの・・・・・可愛いJKですよ?幸せもいっぱいあげますよ?」


「・・・・・・・・・」


無言で携帯を弄り、完全拒否体勢をとる。


「・・・・・・悠さんは本当にひどいです」


そう言う少女は捨てられた子犬みたいになっていた。




「悪かったよ」


慰めようとした俺は無意識に少女の髪を撫でる。


「・・・・・・もっと撫でてください」


ヤバいという気持ちもあったが、本人から催促されて拒否する理由は見当たらなかった。


「悠さん撫でるの上手いですね。やっぱり・・・・・」


「あー・・・・。猫好きだからかな」


「私は動物ですか!?」


この時やっと最初に会った時の違和感に気づいた。

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