パラレルな後日談

大きな花丸

「良く出来ました。」


 喫茶店のテーブルに、真銀さんが封筒を出します。


 その表面には、大きな花丸が描かれていました。


 自分の書いたラブレターを、野上君は見詰めます。


「…合格?」


 頷いた真銀さんは、自分の紅茶のカップに手を伸ばしました。


「添削料でご馳走してもらうのも…次が最後かぁ。。。」


 沈黙している野上君の様子を、真銀さんが伺います。


「最初に行った<カフェ敦賀>でも良い?」


「…了解」


「来週の…土曜日で良いよね?」


 口を結んだ野上君は、黙って頷きました。


 何か言いたげな野上君に、真銀さんは気が付かないフリをします。


「で、再来週の土曜日…なんだけど。」


「?」


 真銀さんは、脇に置いた鞄から 2つに折られたチラシを取り出しました。


 カラフルな印刷のチラシを、野上君に見える様に テーブル上で開きます。


「これ見に行かない?アルフォンス・ミュシャ展」


「え?」


「これは、添削料じゃないから…割り勘で良いよ?」


「…」


 口をぽかんと開けた野上君からは、答えが返って来ませんでした。


 真銀さんは、テーブルに手を付いて身を乗り出します。


「─ 行くの?行かないの?」


「…い、行きます!」


 返事に聞いて、微笑む真銀さん。


 身体を引いて、満足そうに椅子に腰を落とします。


「その次のデートは…野上が行きたい場所に付き合うからね♡」

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