レンの哲学
翌朝。俺たちは起きた後探したいものについて話していた。
「しっかし、情報屋の求める情報ねぇ」
「簡単に言うけど、まぁ難しいよね」
「おいおいレン、言い出しっぺがそんなんでいいのかよ」
「これまで本当に情報に無頓着だったと今になると思うよねぇ」
「そんなのんきに言われてもなぁ...まぁ確かに戦線の状況ぐらいしか買ってこなかったからなぁ」
「金に余裕がないんだから必然命に直接かかわること以外に金使おうとは思わないからねぇ。しょうがない部分もある、と言い訳だけはしたいけどおかげで情報屋がどんな情報を持っているのかもいまいち想像できない」
とまぁこんなノープランもいいところな会話を繰り広げながら昨日の寝床から出る。
「とにかく何があるのか確認しなきゃ話にならない。これが売れるだろうと予測してもそのものがなきゃ話にならん」
「おまけにその情報をどう使い、どう動くかも考えないといけないからねぇ」
「のんきだな、おい。ここ数日レンがのんきなのか切れ者なのかはたまた感情的なのかよくわからんことになってるんだが」
「自分ではどうにか普通でいたいんだけどなぁ...」
コハクの言葉に苦笑いするしかない。
「ま、自分でそう思うとなかなか普通ではいられないのかもね」
「少なくとももうちょっと柔らかかったぞ」
「...ねぇコハク」
「ん?」
「例えば...そうだなこの時代なんだ。ある日平和に暮らしてた人が徴兵なりなんなりで兵士になったとしよう」
「?お、おう」
「その人は戦場でそれはそれは長いことさ、生きるために、勝つために敵の兵を殺し続けるわけじゃん。もはやそれが日常じゃんってくらいに。そして自分の周りでは味方、敵、とにかく大量の死体が転がっているわけだ」
「そりゃぁ、まぁ」
「それでなっがーい時間がたってさ、終戦したとしよう。その人はある意味、急にその人にとっての非日常が日常になる」
「...」
「当然本来そっちが日常だったはずなのにもうそんな感覚はない。その人がさ、その日々の中で、殺人鬼ななったり、そこまではいかなくても人に対して残忍になっていたとき、周囲の人間は言うだろう。お前はそんな奴じゃなかった。お前はそんな奴じゃない。それはお前じゃない。と」
「...」
「でもさ、その人は言う。自分ではこれが普通だと。その時、周囲の人間はそれでも声を大にしてお前はそんなじゃない、今は普通じゃないと言い切れると思うかい?もはやその人は本質すら変わっているとすらいえるのに?」
「さぁな。随分と哲学的なことを言う」
「その人間のその人間たらしめるものを決めるのは他人か?それともその人間自身か?さっきの例のようになると自分では自分は自分なのに他者、つまり圧倒的多数は自分は自分でないという」
「つまりレンよ、レンはこの短期間で普通が変わり、それを俺が変だと言っているだけだと?」
「さぁね。まぁでも僕が普通にしているつもりでそれをコハクが変だというなら、それは僕が変わったということなんだろう」
「ああそうかい。まぁいいさ。こんな禅問答みたいな哲学やってる暇は今ないはずだろう?」
「ごもっともだ」
そうこうしている間にだいぶ日も登ってきた。コハクの言う通り、そろそろ行動を開始するべきだ。せめてここにいた軍の概要くらいはもう少し明らかにするかより多くの物資のある場所ぐらいの情報はつかんでおきたい。同時に金を集めないといけないから大変だ。
「今日はどうも大変な日になりそうだな」
「おいおいレンよ嫌なこと言うな。実現しそうで怖えぇよ」
「あぁごめん。でもやることは多いからね」
僕ら二人はこうして寝床から出て今日の行動を開始した。
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