第3話 種植えん
乾いた大地に、僕は立っている。
まわりには何もないし、ただ陽射しが強く降り注いでいるだけ。
どうにも足なんて動いてくれはしない。
もしここに、かつての景色がよみがえるとして、その色は何だっただろう。
考えてみれば、ことの始まりはこんなやせこけたところなんかじゃなかったはず。
誰かが間違いを犯しつづけたから、こうなったんだ。
青色ならば、たまに見上げているこの空の色だし、迷うことはない。
そんな色だったら、もうすでに知っているはずだし、たぶん違う。
透明というよりもむしろ、若さを感じる色だったような気がする。
それがどういう色かということは、もはやいわなくてもイメージすれば浮かぶ。
思い出せば、この大地もまた新しく彩られることもあるのだろうか。
答えは、どこからか聞こえてきてもおかしくない。
都会の雑踏で信号が変わったら、僕はまた歩きはじめるのだろう。
それまでは、ただ円いような四角いような赤をにらみ続けているんだと思う。
ほんとうの景色は、それを見続けることよりも足を動かすことによって描かれる。
すれ違った誰かが教えてくれたのかもしれない。
いまとなっては、顔もよく覚えていないけれど。
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