第2話 朱円

 蒼さが透明でよく視えなかったとしても、赤色になれば見えることもある。

 それはたまにではあるけれど、はっきりした色だから迷わない。

 たとえこれまでたどってきた道が閉ざされても、その色こそが道しるべだから。

 いまとなっては、ちょっと黒みがかっていたりもするけれど。

 海に立つ波にまるく呑み込まれるようなその太陽こそが、君の色だとして。

 また僕が勝手な想像力を働かせて、何もかもを正当化しようとしていたようだ。

 こんなこと、誰に知られて何の役にも立たなさそうなのに。

 それを指摘されたときこそが、僕の終焉かな。

 どうしてだろう、最近はどうも調子があがらないな。

 黒く塗りつぶされた過去がいま握っているのは、もしかすると僕の心臓?

 循環する赤いそれのことなんて、ふだん意識することはないけど。

 夕焼けに思いを馳せたときに、きっと思い出すこともあるのだろうか。

 いまとなってはこれらすべて君が見せた幻想で、すでに実感を忘れている。

 夜というのはたいていそういうものだ。

 これから夏になろうとしているけれど、じつは冬めいていたりもして。

 僕だけはそれをはっきり意識しているから、熱さも寒さに変換しちゃいたい。

 相対的に自分の体温より気温のほうが高いこともあるから、きっとできる。

 そんなことがまかりとおったとして、君はまたどこかに行ってしまう。

 僕はたしかに知っていた。

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