shu_en
01♨
第1話 終焉
過去を見れば、誰かの通った道にはすでに雪が積もっていて、足跡さえ見えない。
あの勇敢だった侍たちは、どこかに行ったのだろう。
醒めた夢ならば、その後の世界などもはやどうでもよくなってしまう。
なぜならば、そこに通じる道は、すでに閉ざされてしまっているから。
消えてしまったものはたくさんあって、思い出すとすると幾分か時間を要するか。
なんでもいいが、とにかく大事なことがそこにあったような気がする。
気がするし、しないこともない。
西の空を見れば、赤黒い光のような闇のような景色が見えていて、どこか虚しい。
もう、あのときのような青さをのぞくことはないのだろうか。
それすら忘れてしまうほど、いまもこうして僕らは歩き続けているようだ。
線香の煙は、誰かのことを思っている。
知らない人に向かって何かを叫ぶような声さえ聞こえてきそうな顔をして。
君が遠くから聴こえてきても、僕がそちらを振り返ることなどあってはならない。
その名前さえも、海の中に溶けてしまいそうなほどに儚い。
蒼さを少し思い出しても、透明だから自分の色じゃないと否定したくなる。
何も間違いじゃないと思う。
どちらに行っても黒ならば、対極にある白は彼を挟む方法を考えているところか。
それこそ、いろいろな分岐点に置かれた目印の色が彼女だったりする。
秋の日のちょっとした妖艶さが、いまとなっては灰のよう。
おそらく、雪のせいだろう。
水の集合体は冷たい塊となって、僕たちをやわらかく濡らしていた。
涙はもう枯れ果てていたから、どこに行っても同じ顔をしている。
褪めたのは、誰の色か。
答えは、なんとなく見えていて、でも僕の口からはいえない。
おそらく、感覚としての理解がまだ追いついていないのだろう。
誰にも訊けないから、君のことばで気づきたいんだ。
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