第五話 変化

2、変化


「どうしたの?」

声が聞こえた。聞きなれたかわいい声。見上げてその声の主を見る。その人は僕が一緒にいて一番安心する人。少し落ち着き辺りを見回す。そこはさっきまでウィンドウショッピングをしていたその場所。僕は彼女の隣に立っていた。しばらくポケェっとしていると彼女が僕の顔を覗き込む。

「どうした?ヒロ君?」

ふと我に返り返事をする。

「なんでもないよ。少しぼーとしてただけ。」

「そう?変なの。」

そういって彼女は歩き出す。その姿を見て僕は安心していた。そして気が付いた今は事故が起きる前なんだと。

「マイ。」

「何?」

「ちょっとさ、寄り道しない?」

「なんで?レポートまだできてないんだよ?雨だって降ってるし。」

「いいから、また新しい発見があるかも。」

僕はマイの手を引き、無理に回り道をした。

少し違和感があったかもしれない。でもそれ以上に怖かった。今は事故が起こる前。つまりこの後事故が起こるのではないか。そして今度はこの人を守れないんじゃないかと。僕の考えは当たりだったのか、外れだったのかその日は何事もなく家にたどり着いた。しかし僕は心配でならなかった。このときは大丈夫でも次の瞬間失ってしまうんじゃないか。彼女は一人暮らし。今日は泊まらせてもらおう。部屋は一部屋だが僕が床で雑魚寝すればいいことだ。


夜。眠りにつく前、彼女はベット、僕は布団を敷いてもらい寝ることで解決した。

寝る前に話をしよう。

「今日は泊めてくれてありがとう。」

「別に~一人暮らしって静かで暇だし。」

「それでもありがと。」

「まあでも~レポートは時間かかっちゃったけど?」

「だったら尚更ありがとう。」

「ふ~ん」

マイは鼻から息の抜けるように返事をする。

「なんか、ヒロ君ってさ、違う?」

ジトッとした目でこっちを見てくる。そのしぐさを見ているだけでこの人と一緒にいることをこころより嬉しく思う。なぜこの人は僕の喜ぶしぐさを知り尽くしているんだろう。「違うって?そういうこと?」

「なんかさ、今日はやけにぐいぐいしてるなぁって。」

「そうかな?」

「私から見てそうなの。」

またジトッとした目で見てくる。

「その目止めろよ。」

「あ、ごまかした。」

「ごまかしてないよ。」

「ふ~ん。まあいいけど。」

寝返りをして彼女は眠りについた。本当は少し考えてはいた。マイにすべてを話してしまおうかなと。でも僕自身なんて説明していいかわからない。例え僕が話せたとしても、いや話せない。聞けばマイはどうなってしまうのか。どれだけ明るい彼女でも-

聞きたくないはずだ。誰だって自分が死ぬ予定だとは聞きたくないと思う。勝手に自分の中で約束して眠った。

続く

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