第二章 第二話 恋するアイドル part2
お客の名前は聞くまでもなかった。テレビを見たことのある人間であれば、さっと出てくる。
「あの、ここで話したことは絶対他の人には伝わりませんよね?」
その声はハスキーではあったが、美しく通った声であった。仲上はその声を全身で感じるかのように聞き、質問に答える。
「はい、お客様の情報は外部には漏らしません。」
いつもより暖かく、気を使った声で答える。それを聞いて長谷川は仲上の方を眼を細くして見つめる。しかし仲上はその視線に気が付かない。
「ほんとに、ほんとですか?よくテレビとかでやってる。{SNSとかから流出しましたー}とか、{第三者の取材によりー}とか、ほんとにありませんよね!」
食い気味で話しかけてくる佐久良に全く臆することなく、むしろ幸福に思ってしまう仲上は答える。
「はい、ぜひとも、私たちを信頼してください!」
食い気味の姫に対して似合わないスーツの家来は堂々と返した。それに納得したのか、姫は姿勢を直す。
「じゃあ、その、相談の方なんですけど――」
「はい」
「その、私、その――」
なかなか言い出しにくそうだ。
「安心してください。我々はあなたの味方です」
仲上がにんまりと笑う。
「は、はい。すーはー。私、好きな人ができまして、その、どうしたら上手く仲良くなれるかなぁって」
その言葉を聞いたとき、仲上の黒目は消えていった。長谷川の眼鏡も曇っている。かろうじて仲上の口が動いた。
「オイ、マモル。イマノキコエタカ?」
「はい、しっかりと。依頼主ははっきり相談と言いました。それも恋愛の。つまりこれは探偵に頼む依頼ではありません!」
「そこじゃねえよ」
「やっぱり無理ですよね!ごめんなさい!」
佐久良は立ち上がり出ていこうとした。
「待ってください。やります。やりますよ」
知らぬ間に、一番ショックを受けているはずの仲上がツッコミに回ってしまった。
続く
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