第2話 猫は知っている part2
部屋に上がりリビングの方まで誘導される。途中でキッチンをちらと見たがキャットフードの袋が一つきれいに置いてあった。三人ははリビングで正座し本題に入る。
「どうなんですか?見つかりそうですか?」
詰め寄るように藤田が仲上に話しかける。長谷川はやはり会話をしたくないのか端の方に縮こまっている。
「精一杯行っています。今のところ範囲は狭めてきています。」
緩く嘘をつく。猫の特徴は黒と白のまだら模様。目の周りは黒模様のハートマーク装飾品なし。写真ももらっている。聞くところによると藤田香は猫が消えた翌日に依頼を出したそうで、本当は自分で探したいがもう足腰があまり持たないらしく探偵を頼ったそうだ。これならだましだましやっていけるかもしれないという悪知恵から仕事を受けてというのもある。
「そうですかぁ。あの子どっか散歩に行ってふらっとまたうちに来てご飯するみたいな放し飼いだったんでどこ行ってるとかわからなくて。でもやっぱりいなくなるとこの年ですからすごく寂しく感じてしまって。」
「お気持ちはお察しします。」
「ベランダにまたキャットフードとかもおいているのですけれど全く気配が無くて。」
フォローしたつもりが逆効果であった。
「私どもも全力を挙げて探しますのでご心配なく。」
こういう時は相手に不安感を与えてはいけない。なにか安心できる材料はないのか。話を変えよう。
「藤田さんは猫がいなくなったとき何をなさっていましたか?あと、、最近の変化であったり。」
「昼の終わりごろに日課である散歩を。足腰が弱いとはいえ放っておいたらもっと悪くなるかと思い、始めました。あと、年齢のせいか物忘れが出てきたようで探していたもの見つからなく。」
その時ゆっくりと長谷川は近づいてきて言った。
「もう十分聞きたいことは聞けましたし大丈夫です。後は寄り道して帰りましょう。」
「は?」
意味不明であった。十分も何もお前は会話すらしていないじゃないか。さっぱり言っていることがわからない。
「安心してください。猫の居場所なんですがおおよそ見当がつきました。」
「え?」
「え、二回言いましたね。」
「うるさい。」
確かに驚きの二連発。今の会話で何がわかったというのか。
「だからさっさと帰りましょう。」
「だから適当に切り上げて帰りましょう。」
「バカ、急にそんな適当にできるか。」
「じゃあ僕は先に帰ります。」
「おい。」
長谷川は何も聞いていないかの如く。立ち上がり外に出る。元々出口に近いことがあり。止めることはできなかった。
「すいません。失礼します。」
こうなっては自分も出ていくしかない。、仲上は長谷川を追いかけるように出て行った。
続く
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