第1章 第1話 猫は知っている
全く喜びの空気は流れなかった。
「なんでだ。犬の次は猫か。まったく。」
「大丈夫ですよ仲上さん。依頼が来ないよりましです。」
「そうは言えどさ。」
「とりあえずその藤田さんのお宅に訪問してください。それから探しましょう。はやく連絡を。」
「なにを言う。お前も行くんだよ。」
「絶対に嫌です。」
「駄目だ。依頼人との信頼関係を気づくためにも行くんだ。」
「ううぇー。」
「文句を言うな。」
少し気分を沈ませあと顔をあげて眼鏡を整え彼は言った。
「あと、仲上さん。まだ猫探さないでください。」
「はぁ?なんで。」
「今は疑惑ですから。仲上さんに言っても混乱させるだけです。」
「まったく。わかったよ。」
ここで噛みついてもなにもないと思い受け入れた。
二日後、藤田香の自宅の前に訪れた。アパートの一階ではあるが一般的なものよりも少し広いくらいだ。家のほうにはなにか問題があるとは思えない。問題があるとすれば長谷川のほうだ。
「マモル、なんだその恰好。」
長谷川は顔にガスマスクと言わんばかりのもそを装着し、三百六十度どこから見ても表情を確認できない。
「マモル、それ取れ。」
「嫌です。」
「お前いつも事務所来るときそんなの付けてないだろ。人見知りもそこまで行くと病気だぞ。」
「僕は人見知りではありません。得体も知れない人に特定の誰かと認識されることが嫌なんです。」
理解できるようで理解できない。不気味な理由だ。
「だとしたらその姿はものうごーく目立ってるぞ。」
あえて協調をつけ話す。
「わかりました。じゃあこうします。」
長谷川はガスマスクを外した。妥協してくれたのかと感じたが、勘違いであった。
彼は持ってきたバックからプロレスラーが使う覆面が出てきてそれを被ろうとする。
「お前は変装が趣味なのか?」
「いいえ。」
仲上は頭を抱えた。もういっそのことこのままでもいいんじゃないかとさえ考えたが、探偵とは信頼関係が第一。どうにかしなくてはこの状態でなにえを言っても信憑性に欠けてしまう。そもそもお前が面会した一定言ったんだろ。
「藤田さんは目悪いらしいよ。」
どうでもいい情報をツッコんだ。
「え、なんでそれを先に言わないんですか。」
長谷川は興奮し、いつもの状態へと戻った。いったい何が起こったのかこいつの価値観は未だに理解できない。しかしなにはともあれこれでやっと家のインターホンが押せる。
ピンポーン
続く
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