第三部 夜空に花火が舞う日に降り注ぐは
第10話 再び炭酸水の降った日
「せーーのっ!!」
その声と共に、晴れた夏の
夏祭りの日。
「こんばんわー!」
と、声を響かせる。
「いらっしゃい、涼太くん。悪いんだけど、庭の方から
と言われる。昔からそうやって回った先の縁側でスイカを食べたり、庭でバーベキューをしたりしていたので、涼太は何かあるのかなくらいにしか思わず、
「わかりましたー」
と、疑うことなく玄関から出て庭のほうに回る。
そして、涼太が庭に足を
涼太は
「おい、梨奈! いきなり何すんだよっ!」
涼太は本気で怒っているわけではなく、身に覚えのない理不尽な仕打ちに対しての
「ごめん、ごめん。とりあえずこれ以上は何もする気はないから、安心して縁側に回ってよ」
しかし、梨奈は悪びれる様子もなく涼太を縁側に
「はあ? 意味わからないんだけど」
「まあ、いいから、いいから」
涼太は
「ごめんね、涼太くん。とりあえず、簡単に体を
涼太はそんな梨奈の母親の対応を見て、何かしら
「わかりました。それで……俺はこれから何をさせられるんですか?」
「まあまあ、まずはシャワー浴びないとね。そのまま甘い匂い漂わせながら、ベタベタのままでも我慢できるなら、無理にとは言わないけど」
梨奈の母親は
「服はちゃんとこっちで
梨奈の母親に
「着替えは置いておくからこれに着替えてねー。脱いだものはそのままでかまわないから」
と、梨奈の母親が脱衣所に入ってきて声を掛けていった。涼太はさっと頭と体を洗い、脱衣所でタオルで体を拭きながら着替えに目をやる。用意されていたのは黒の
涼太は甚平を着たことがなく戸惑うが、内側と外側の
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら居間に戻ると、
涼太は状況の整理が追いつかず、居間との
「どうよ? 似合う?」
と、梨奈が笑顔で
「ああ、似合ってる、似合ってる」
梨奈は「そうでしょ、そうでしょ」と陽子に抱きつきながら、自慢げな表情を浮かべる。
「じゃあ、みんな
梨奈の母親がそう言いながら、いつの間にか用意していたデジカメを構える。
「ここで撮るのもあれだし、外で撮りましょう」
梨奈の母親に促され、梨奈は陽子に抱きついたまま玄関の方に移動する。
「涼太も早く来なさいよ!」
「ああ、わかってるって……って、俺の靴、縁側に置きっぱなしなんだけど」
「まあ、いいからいいから」
玄関まで来て、涼太は違和感を覚える。炭酸水をかけられる前に玄関に入ったときに比べて明らかに靴が増えていた。女性物の
玄関から出てすぐのところで、涼太の右側から梨奈が腕に無邪気に抱きつき、涼太は思わず驚きの声を上げる。それと同時に反対側から陽子が涼太の上着の袖の
その瞬間に、写真を撮るためのフラッシュがたかれる。
「「えっ!?」」
梨奈と涼太は同時に声をあげ、その
「撮っちゃった」
梨奈の母親がデジカメを顔の前からずらし笑顔を覗かせる。
「お母さん! 今のなし! もう一枚!」
「あら、そう? じゃあ、もう一枚撮るわよ。はい、チーズっ!」
その声に合わせて、涼太は真っ直ぐにカメラの方に向き、梨奈は涼太の右腕に左腕を回し右手でピースサインをする。陽子は両手を体の前で組み、目を少し泳がせた――。
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