第二部 夜空に重ねて消えゆくは
第7話 帰省した心の中は憂鬱模様
今年もまたお
私は引っ越してから初めて
そして、私はその街でかけがえのない二人の友人と出会った。
引っ越す前の私は引っ込み
それが今は心から友達といえる人がいる。一人はいつも明るく、元気で笑顔が
そんな二人といつでも会える距離にいないというのが
帰省するのは基本的に毎年お盆だけで、かつて住んでいたマンションから
そして、今は母方の実家に来ていた。昼過ぎに到着して、まず
夕食を食べ終わると、
こっちに住んでいたころはよくこの辺りも歩いたはずなのに、どこか知らない街を歩いているようで落ち着かなかった。
コンビニでいつもの炭酸飲料を探すが缶のものはなく、仕方なくペットボトルの商品を手に取り、会計を済ませた。コンビニを出て、真っ直ぐに家に帰ろうという気にはなれず、近くの小さな公園に寄り道することにした。
ベンチに座り、炭酸飲料のキャップを開け、一口だけ飲んで炭酸が抜けないようにキャップを閉める。そして、思い出す――五年前までは炭酸飲料が一切飲めなかったこと。初恋の人が好きな飲み物で、出会うきっかけにもなったこと。
最初は彼の
そんなことを思いながら、なんとなく見上げた夜空はほとんど星が見えず、見慣れた空との違いを感じる。その都会の明るいはずなのに暗い夜空に不安を覚えた。
そして、その不安と同時に憂鬱さを感じるもう一つの原因がふと
それは進路を決めなければならないことだった――。
「
「いえ……まだです」
「それなら、以前にも言いましたが
夏休み直前の進路希望調査を白紙で出し、三者面談の場でも進路を再度問われた私はそこでも返事を
本当は行きたい学校はあるのだが、それを担任の先生に伝えると学力と
三者面談のあった日、家で両親と進路をどうするかと話し合いをした。学校から推薦の話を貰っていて、希望すればだいたいどこの学校にでも行けること、また成績からすれば
両親はどの学校を選んでもいいという考えで、父親はさらにもう一つ
「陽子がこの先、大学進学なんかを本気で考えているなら、前に住んでいた街に戻って、そっちの学校に進学してもいいんだぞ。先を
「たしかにそうかもしれないけれど……戻るって、あなた。仕事はどうするの?」
「陽子が本気なら転勤願いでも出すさ。すぐに転勤できなくても一、二年くらいなら
父親の言葉に母親もそれ以上は何も言わなかった。そして、二人の視線がゆっくりとこちらに向く。
「ちょっと待ってよ、お父さん。私の答えによっては引っ越すって、本気で言ってるの?」
「ああ。大事な娘のためだからね。ただそういう進路もあるんだということは覚えていて欲しい。選べる選択肢は多い方がいいからね」
父親はいつもより
「あとは陽子が自分の将来のことも考えながら、行きたいと思う学校を選びなさい」
と、こちらも同じような表情を向けてきた。
「わかった……ありがとう」
十年、二十年後に思い返すと、紛れもなく人生の
私が行きたいと思う学校はそんな二人の友人が行くであろう地元の公立高校だった。直接は聞いていないけれど、私と違い運動が得意で勉強があまり得意でない二人は、近いという理由も含めて、その高校を選ぶのだろうと思っている。学力や将来だとかそういう面から見ると、私がその高校を選択するのはいい選択でないのは分かっている。ただ恋愛だとかそういうことに一番多感になっていくこれからの時間を私は好きな人の近くで過ごしたかった。
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