第二食:仕事三昧

「腹減ったなぁ~。」

相も変わらず俺は言う。


目が覚めてから数日、俺の体力はそこそこ回復し、少しふらつくが、

自分の思い通りに歩けるようになった。なぜこんなに回復が早いかと

いうと、一つの事件が関係しているーーーーーー


「おっはよ~!今日も元気に回復回復!」

「のわあああ!」

朝っぱらから回復魔法を打たれた。人体に損傷がないかひやひやである。

「おいお前。なにするんだ。死んだらどうする。」

俺の心臓は痙攣するようにはねた。あぶねえ。まじでやべえ。

「大丈夫だって!ほら。成功したでしょ?」

「たまたまだろうが!やべえ!俺死にかけたよ!やべえぞまじ!」

もう怖すぎる。おかげで少しずつ体力や力が回復しているものの、

失敗した時を考えるとひやひやである。

「エナジー・ヒールッ!」

「ひげええああああああ!」

「あははははははははは!」

「笑いすぎじゃぼけえええ!」

もうやだ。元の世界に戻して・・・。

「お前ら朝っぱらからうるせえんだよ!起きちゃっただろうが!」

おっと、兄上のお目覚めだ。君の妹のせいだぞ。俺に言うな。

「居候のみならもっと静かにしてろ!あとお前もな!回復使うんじゃねえ!」

「ひゃいん」

げんこつされて頭を抱えながらダウンするエミア。いつものことだ。

「じゃあお前やめさせろよ!こいつに回復使わすの!」

「できねえから困ってんだろうが!」

少しおびえる俺。情けない。

「お前もそろそろ仕事できるんじゃないのか?いろんな仕事があるぞ。

石運び、土地開拓、農作業、あ、これもいいんじゃないか。ヌードデッサン

モデル。あ、キモ過ぎて無理か(笑)。」

くそ。こいつ一度締めたい。まあ確かに最近は食っちゃねの生活させてもらってるし

なあ。さすがに何か結果生まないとだめだよな・・・。もと引きニートな俺が

引きニートに戻ることのないように、世界は仕組んでるのかなあ?

「まあ俺の体力も戻ってきたし、そろそろ活動しても平気かもな。仕事は

自分で探すよ。」



と、まあこういうことがあったんだな。それで俺はいろいろ仕事を探したわけだが、

体を使うものばっかりで萎えてしまったのも事実。建築よりも絶対につかれる

ものばかりだった。でも働くしかないのでしょうがなく補修作業の仕事に就いたわけだ。

今さっきピッケルで地面を削っていて、今は休憩タイムだ。エルフなだけあって、ひょろいやつ

が多いのかと思ったが、この環境のせいか、なかなかいい体躯のものが多い。

筋肉ムキムキで色黒なのがごろごろといる。エルフといえば、かわいらしく、白い肌に尖った

耳が頭に浮かぶと思うが、中にはそういうやつもいるということだ。うん。

「休憩終わりだぞてめえら!さっさと石削り続けろいや!」

早くね!?いや、休憩早くね!?くそ~、腹減った~。

俺昼食食ってないのに・・・。ああ。意識が遠のく。やっぱり療養しといたほうがーーーーー







「おっ!起きたか!大丈夫かよ兄ちゃん。」

「あれ・・・ここは・・・。」

あ、俺倒れたのか。

「まったく、まだまだ体力たんねえなおめえさん。もっとビシバシ働いて

もらわねえといけねえのによ!」

「す、すいません!」

やっちまった~。初日でやらかした~。絶対目つけられるよ~。怖いよ~。

「ま、兄ちゃんみてえのは少なくねえけどな。」

ムキムキエルフで俺の上司のカルムは親指で横を指した。

そこには数十名の少しやせた、俺みたいなやつらがうなりながら寝込んでいた。

「やっぱ、初心者には多いんだよなあ。ダウンしちゃうやつ。」

「そうなんですか。」

「おう!おめえさんはなかなか持ったほうだよ!」

前の世界での精神力のおかげか、なかなかもったほうらしい。最近起きたばっか

だけど。自画自賛してしまう。

「お時間とらせてすいません。仕事に戻りますね!」

立ち上がって仕事に戻ろうとすると、少し細い俺の腕をカルムがつかんで言った。

「何言ってんだ。もう夜だぞ。仕事はとっくに終わってる。こっちで飯作るからおめえも

参加しろや。」

手を引かれた先にはたくさんの食事があった。手羽先や、焼売のようなもの、肉野菜炒めや、

果汁100%のドリンク、酒が大量にあった。

「おい新入り!お前もこっち来て飲めよ!うまいぞ!」

仕事終わりで浮かれてる大柄な男たちが歌ったり踊ったり、語り合ったり、楽しく

やっていた。それにひかれて俺は

「はい!今行きます!」

と、ダッシュしてしまった。

「あ。」

俺はこぼれたジュースに足を滑らせ、頭を打って意識を飛ばした。






「う~ん。」

朝。見間違うことのない日の光がドアから差し込む。そして聞き間違えようのない声が耳に刺さる。

「起きたか。お前何やってんだよ。」

はぁ~、とため息が聞こえる。

「あ、俺。」

「カルムさんにお姫様抱っこで運ばれてきたよ。まったく、お前は何回意識飛ばしたら気が済むんだ。」

ごめん!めちゃ恥ずかしい!お姫様抱っこ!?やばいよそれ!世間に誤解されるよ!

外に出ると、何人かの人妻エルフにひそひそ噂された。

「あの人ってホモらしいわよ。」

「え~。やだー!ヒューマンでしょ?相手は誰?」

「それが!カルムさんらしいのよ!」

「キャー!」

「何?俺のうわさ?」

本物登場。人妻エルフの後ろからぬっと現れた男に仰天したが、それがカルムさんと分かり、そそくさと

退場していった。

「おう!平気か?今日からまた復帰できそうか?」

「は、はいぃ!もちろんですぅ・・・」

さっきの噂に少しがっかりしつつ、上司に対して答えた。

そして俺は今日も仕事を始める。

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