夕暮れ時は虚しさが目を覚まし、空に写す光のコントラストが一層引き立てられる。遠ければ遠いほど幻想から遠のき、近ければ近いほどリアルから遠のく。それを誇張するかの如く、雲は余計にリアルから僕を招いてくる。一律に守られない雲が羨ましくなり、手を伸ばすが、いつも無駄足を踏む。

和らいだ暑さに気付いた鈴虫が、素敵な相手を見つけられずに焦っているかのように、いつもより呼吸を浅くして鳴いている。

自転車に乗り、なんとなく公園へと来た。

夏草の匂いが薄っすら残る公園をダンスホールに変えた風が、高揚した様子で踊っている。

湿気でぐちゃぐちゃになった前髪を整えるが、何度も腰を振ってくる風に負け、髪を預けることにした。

揺れるブランコ。遊具の鉄と鉄とがぶつかる甲高いクラップ。音を立てながら手を振る、僕を見下ろした木々の葉。

楽しそうに踊っている風を羨ましく思ったのか、ダンサーたちがあちこちでうずうずいていた。

風の動きは、一緒に踊ろうと言わんばかりに激しくなった。

空気感と言うのは不思議なもので、ダンサー達はいつのまにか楽しそうに踊っていた。

気付けば僕もリズムに乗って体を揺らしていた。


辺りが暗くなり、そろそろ帰ろうと思いハンドルを握り、サドルに力を込めると風が僕の背中を押し、外まで連れて行ってくれた。

他のダンサーはそれぞれ自由に見送りをしてくれていた。

それに応え、大きく手を振り返事をすると風は公園の中へと戻り、ダンサーたちとまた踊り始めた。

公園から一歩出ると秋風に変わっていた。

不思議と汗も引いた。

しばらく自転車を漕いで振り返るといつもの静かな公園に戻っていた。



汗は秋風に触れると冷たくなった。

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