アロマテラピー
幸か不幸か、夏の蒸した空気は匂いをいつも以上に鼻に落とし込む。香水のきつい匂いを背中から受け止め、その風が向かう先を眺める。
同じ高さから見つめてくる太陽の熱烈な視線が体を熱くさせた。出来るだけ日陰を探しながら家路につく。
太陽は浮気性で、僕らは照れ屋だ。
日が暮れると生温かい風だけになり、さっきより一層匂いに敏感になる。
雑草の匂いが我慢できずに街へ駆け出すのと同時にそれに連れられながら夏祭りが騒ぎ出す。
虫除けスプレーを体に包みながら走る小学生。
汗臭さを振りまく部活帰りの中学生。
うちわを仰ぎながら線香に火をつける屋台のおじさん。
手と手を繋ぎ、鼻に冷たさを与える制汗剤を付けすぎたカップル。
懐かしさと鬱陶しさと温かさと羨望の匂いで溢れる。
今年もその匂いに包まれながら、鉄の匂いのする手で、ラムネを受け取った。
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