第二十章 伊勢(12)
十二
第一陣の軌跡を追っていた群衆の【hope】たちから慟哭が聞こえる。
「な、何? 何があったの?」
ユキは杏児を見る。杏児は首を横に振る。
「ユキさん……」
ユキの前に来ていた【hope】オリジナルが静かに言った。
「動きを止めている場合じゃないよ。次の発射を」
「だ、だけど……」
「方向を少し変えようよ。西二十度へ」
そう言うと【hope】オリジナルは、カタパルトの回転台を一段階右に回して止め、万三郎と杏児のカタパルトに歩み寄って、同様に角度を変えた。その都度、そこに立っている同胞の【hope】たちと無言で頷き合う。
「修正オッケー、発射準備!」
【hope】オリジナルが叫び、【hope】たちがカタパルトに乗り込む。
「ちょ、ちょっと、いいの?」
ユキはうろたえて万三郎と杏児を交互に見る。
「発射、準備!」
ユキを急かすように【hope】オリジナルはもう一度叫んだ。それからユキに歩み寄って耳元でささやいた。
「みんな覚悟ができてるんだ。時間がない。何があっても、動きを止めちゃダメだよ」
ユキはようやく頷いた。レール上に待機している【hope】の背中を軽くたたく。【hope】は顔だけ振り返ってユキに笑いかけた。
「大丈夫ですよ、行ってきます」
「う、うん……」
万三郎が叫ぶ。
「準備、完了。発射!」
杏児が叫ぶ。
「発射!」
ユキも目を見開いてスイッチを押す。
カシャッ、カシャッ、カシャッ。
三台のカタパルトから【hope】たちが先ほどとは少し方向を変えて飛び立っていった。
ところが今度は先程よりも早く、赤い光が寄ってきて、三つの白い光にまともにぶつかったのだ。
「ああ! どうして?」
またしても無残に落下し、光を失っていく【hope】たち……。
群衆の【hope】たちが騒ぎ始めた。
「おい、あの落ち方。あれ、あの赤い光、【
「そうだ、【-less】だ、きっと!」
「まずいな」
【hope】たちのざわめきを聞きながら、杏児が万三郎に叫ぶ。
「おい、万三郎! これってどういうことかな」
その時、ステージ脇のスピーカー群が急に大きな雑音を出し始めた。ピーッ、ガガー。
「……これか、この周波数か? 聞こえてるのか……」
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