第十九章 前夜(18)
十八
対向車が来た。土砂崩れとこちらのヘッドライトに気がついて減速してガードレール脇に車を寄せた。これ以上風が強くなれば吹き飛んでしまいそうな軽自動車だった。向きを変えようとしていたこちらの車のハイビームが向こうの右側の前後のサイドウインドウをまともに照らしつけたので、打ち付ける雨粒の向こうで、運転席と後部座席の人物が腕をかざして光を遮っていた。
「あ」
申し訳ないと思った杏児はライトをスモールに変え、ハザードランプを点滅させる。
すると軽自動車はハンドルを一杯に切って急発進、向こう側で大きく転回して、車の正面を、こちらの正面に対面させるように動いて止まったのだった。そして向こうの車はまるで仕返しのようにこちらにハイビームを当ててきた。
「うう、眩しい……」
こちら側の三人は揃って手をかざして光を遮ろうとする。
「眩しいって!」
言いながら杏児は、相手に再びハイビームを当て返して、眩しいと意思表示をした。相手がハイビームをやめたその瞬間、運転席と助手席、それからその間に後部座席から顔を出している三つの顔が見えた。
三つの顔は全て驚きで口が開いていた。
「えッ!」
「えーッ!」
「ええーッ!」
万三郎たち三人も揃って驚きの声を上げた。
みどり組とチーム・スピアリアーズの再会の瞬間だった。
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