第二章 杏児(13)

十三


「スミス社長を退屈させているなら、お詫び申し上げます。私どもは日本人なので、熱意を顔に出したりせず、慎み深いだけなのです」

“We regret to say that you are boring, Mr. Smith. We are Japanese, so we are naive people. That’s all.”(8)


 僕はタブレットの画面をスクロールして、その後どうなったかを見ていった。すると、このあと、メモがしてあった。中浜が書き添えたものだろう。メモにはこうあった。


 スミス社長は大変厳しい表情。だが、

“Yes, you seem so, indeed.”(9)

と言ったように聴き取れる。スミス社長は理解してくれたようで、安心する。


 そして、中浜が次に編成したシートレの履歴が続いていた。


「しかしスミス社長、覚えておいてください。我が社はこれからずっと、貴社のために新しい挑戦をし続けます」

“But, remember, Mr. Smith, we will always be a new challenge for you.”(10)


 すると、再び中浜くんのメモ書きが挿入されていた。


 スミス社長が言う。

“You don’t want to be our business partner, don’t you?”(11)

と聴きとれた。


「あなた方は、われわれのビジネスパートナーになりたくはないのですね?」と訊かれていると判断し、次の通りシートレを編成して送り出す。


「なりたくないなんて、とんでもない!」

“No, never!”(12)


「これからいつでも、御社に対しては、考えられないほどの割引きをさせていただきます」

“We will always discount your thoughts.”(13)


「そして大変お求めやすい価格で商品を販売させていただきます」

“Besides, we will sell you very cheap goods.”(14)

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