radish...vol.5
この海の向こうでは、もう、世界は終わってしまった。
「この骨は」と僕は問う。「20億年前かな」と博士は言う。
「こっちは」と僕は問う。「それはせいぜい10万年前ってところだ」と博士は言う。
漂着物はすべて、この星の過去だ。
僕はせっせとそれを拾い集めては、博士のところに持っていく。
博士の手の中で、過去は目覚め、遠い悲しみを語り出す。
世界は傷付け合い、皮膚は裂かれ、血を流し、
いくつもの骨を砕かれて、ようやく時を止めたのだ。
終わった世界の欠片は海を越え、この場所で長い眠りから覚める。
物語を紡ぎ、ささやかな根を下ろす。
枝を伸ばし、葉を繁らせ、小さな白い花を咲かせる。
それが、僕と博士の世界のすべてだった。
いつか僕が朽ちて、白い骨になったら、その肋骨も、胸骨も、頸椎も、
この海を渡って、遠い島に流れ着き、小さな花になればいい。
僕は、博士のことを話そう。
終わった世界の外側の、小さな世界の花守のことを。
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