第5話 テクノブレイクとは
◇如月兄
「ええ、良助! はぁぁぁぁっっ!! テクノォォッ! ブレェェイク!!!」
よくわからないセリフを吐きながら胸を強調するポーズを取った女の前に、俺達は思わず凍り付く。
(テクノ……、ブレイク……?)
なんだ? もしかして、何かの技名なのか……?
いや、違う……。俺はこの名前をどこかで……………………!?
思い……、出した……!
そうだ、テクノブレイクといえばいわゆるアレだ。
俺達若者の多くが経験する、非生産的行為。
そう、確かアレにまつわる逸話だったハズだ……
アレとは色々と持て余し気味な若者が、自分の欲望を鎮めるために行われる儀式である。
いや、若者だけに限った話ではないな……
この苛酷なストレス社会により、多くの人々は抑圧され、逃げ場を求めているのだ。
そんな者達にとって
故に
しかし、ナニをアレするにしても、物事には必ず限度というものがある。
その悲劇は、ある一人の戦士が限界を超える行為に及んだ際、起こったとされる。
所説によると、その戦士はかの儀式を1日35回、一週間欠かすことなく行ったという。
その数字は間違いなく異常であり、志を同じくする戦士たちも、その凄まじい性神力を持つ戦士に敬意を払ったそうだ。
しかし同時に、彼らはこうも思ったようだ。
なんと愚かな……、と。
結果として、かの戦士は自らに課した苛酷なスケジュールで
その悲報は、全世界に存在する多くの戦士達に、大きな衝撃を与えたという。
ある者は戦死の
こうして、彼の死に対する見解は、戦士達の間で長く討論されたという。
その際、この死因に対する呼び名として定着した名前こそが、『テクノブレイク』なのだ……
まあ、ぶっちゃけ、造語なのだが、実際にテクノブレイクは起こり得る悲劇ではある。
そりゃ、そんな回数興奮状態になってたら、ヤバイ血管くらい切れてもおかしくないだろう。
で、問題はその『テクノブレイク』と叫んだこのアホ女についてだ。
何を血迷ってそんなことを叫んだのか知らないが、叫んだからには何か理由があるのだろう。
一緒にいた男が、使え! とか叫んでいたので、もしかして何かの技なのか……?
技だとしたら、一体何をする気だ……?
…………え? まさか、もしかして、ひょっとするとエッチな技だったりするのだろうか!?
よく見るとこの女、凄まじくスタイルがいい。まさか……、まさか……!
もし『テクノブレイク』という名に意味があるとするならば、それは全然あり得る話である。
俺は今、リアルセク〇ーコマンドー使いと対峙しているのかもしれない!?
静まり返った空気の中、俺はこの状況にどう対峙すべきかと、頭を高速回転させる。
それを知ってか知らずが、アホ女がゆっくりと歩きだした。
(来るか!? ……………………っ!?)
異変に気付く。
先程、俺が『テクノブレイク』の正体について考察する際、目に焼き付けたモノ。
それは、このアホ女のおっぱいだ。それはいい。実にいいものだ。
しかし……
(目が、離せない!?)
「……愚かね。貴方達はチェスや将棋でいう『詰み(チェック・メイト)』にはまったのよッ!」
なん……、だと……?
そう思った瞬間、首に凄まじい衝撃が走り、俺の意識は闇に沈んでいった。
◇神山良助
「……おい、こりゃ一体どういうこった?」
「ふむ、どうやら尾田君にはかからなかったようだね。おめでとう。君は第一関門を突破した」
ぱちぱち拍手する。いやぁ、結構嬉しい誤算だ。
なんだか尾田君とは、この先長くやっていけそうだな~。
「第一関門ってなんだよ!」
「ま、いいじゃないか。とりあえずこの場は片付いたワケだしさ。まあ放置していくのもアレなので、尾田君もてつだ……」
「ていっ!!」
「んなっ!?」
変な声を上げて地面に沈む尾田君。
……しまった。一重を制止するのを忘れてた。
「ひーちゃん、駄目だよ蹴っちゃ……」
「えっ? だって両成敗って……?」
「テクノブレイクが効果無かった時は様子見って言っただろ? 視点誘導効いてないんだから……」
「あ……、そうだった……。ごめんなさい、りょー君……」
「いや、俺も注意するの遅れたし、ひーちゃんが無事ならいいんだ」
しかし、尾田君には悪いことしたな……
『テクノブレイク』は、彼女を外敵から守るために俺が伝授した視線固定魔術だ。
この魔術の効果は、彼女の体をイヤらしい目で見た者の視線を、見た箇所で固定するというものだ。
一種の呪いのようなもので、
この世界には、魔力を持った人間がほとんど存在しない。
俺自身もカスのような魔力しか持っていないため、前世で当たり前のように使用していた大規模な魔術は残念ながら扱うことができない。
しかし、この
彼女は、この世界では異例と言えるほどの魔力を持っている。
流石に大魔術を扱えるほどではないが、軽く見積もっても俺の10倍近い才能があると言っていいだろう。
「ひとまず、尾田君を保健室に運ぼうか。流石にこのままにしておくのは忍びないし」
本当は尾田君と手分けして、如月兄達も運ぶ予定だったんだけどな……
まあ別に大した怪我はしてないし、如月兄達については壁際に寝かせておけばそのうち気づいて帰るだろう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます