第3話 それはひょっとしてギャグで言ってるのか
バァーーーーン!
盛大な音を立てて扉が開け放たれる。
「あん?」
音に反応するように振り返るガラの悪い方々。
ガラの悪さが偏差値に直結するとまで言うつもりはないが、我が校の偏差値は程々に低い。
そのことについては俺が最大限に協力したのだが、力及ばず、最底辺を回避するだけで精一杯だったのだ。
「待ちなさい! アナタ達、一人のイタイケな少年に対して寄ってたかって……、恥ずかしくないの!?」
イタ……イケ……?
それは
尾田君は俺と同じクラスの、いわゆる不良に属する存在だ。
身長188センチ、体重100キロを超える巨漢にして坊主頭。その鋭い目つきにはクラスメイトの多くが恐れを抱いている。
かく言う俺も、その多分に漏れずビビっている側の人間だ。
いやいや、あれは怖いってマジで。
異世界にもあんな強面、そんなにいなかったぞ?
まあ、俺の周りは学者ばっかだったけどさ……
「……なんだお前? もしかして、俺らに文句あんのか?」
「有るに決まっています! 尾田君は私のクラスメート、つまり仲間です! その仲間が不当に襲われているというのに、文句が無いわけないでしょう!?」
クラスメート全員が仲間っていうのにはツッコミたいところだが、今はとりあえず黙っておこう。
「襲うって……。別にまだ襲っちゃいねぇけど……。つーかよぉ、不当って言うが、お前コイツが何したか知ってるのか?」
「……そういえば、尾田君を何故襲っているのかしら?」
俺に聞かれても……
というか、彼らの言うようにまだ襲われてはいないからね?
「んだよ、知らないで文句言ってきたのか? コイツはな、俺の弟をボコりやがったんだよ。
「……知らないわ」
知らないのかよ……
朝担任から連絡があったじゃないか……
如月真矢は隣のクラス、1-Cの生徒だ。なんでも先日、他校の生徒に絡まれて病院送りにされたらしい。
皆も注意するようにと、担任から注意喚起が行われたのだが……、どうやら一重は聞いていなかったようだ。
なんだか、前世で臨時講師を引き受けた時のことを思い出してしまう。
先生って、やっぱ大変だよな。
「あのー、如月君は他校の生徒にやられたって聞いていますが?」
「良助知ってるの? 流石ね……」
流石も何もないが、とりあえずスルーしておく。
「……知ってるなら話は早ぇ。そりゃな、いわゆる表向きの事情ってヤツだ。実際のところ、弟はコイツにボコられたんだよ。怪我は大したことねぇが、精神的に参ったらしくてな……。部屋に引きこもっちまってる」
怪我は大したことないのか……
全治一週間のため自宅療養って聞いていたが、それも表向きの事情というヤツのようだ。
それにしても、どうやら話が通じないと察したのか、この如月兄は早々に一重を無視し対話の対象を俺にしている。
中々切り替えが早い。意外に出来る男なのかもしれないな……
「……でも、なんでそれを学校側に公表しないんですか? すれば尾田君は停学、最悪退学にまで持ち込めると思いますが?」
「それじゃ意味がねぇ。弟は一応この学校の番長を目指してんだよ。それが同じ1年にボコられたなんて知れたら、マズイだろーが?」
前言撤回。如月君も、この兄もやっぱ駄目だ……
今時、番長? それはひょっとしてギャグで言っるのか?
しかも、如月君は現在、トラウマを抱えて引きこもり中とか……
そんな弱小メンタルの持ち主が、本当に番長なんて目指したのだろうか?
わざわざそれを理由に出張ってきている、この兄辺りに
「成程! 話はわかりました! 尾田君、一応確認するけど。この人の言ってることは本当かな?」
「……喧嘩を売ってきたのはアッチからだったけどな。ただ、その……、あまりに弱かったんでな……。やり過ぎたかもしれんと少し反省している」
「んだテメェその態度は!? 何やったか知らねぇが、弟は帰って来てからデカブツ怖いデカブツ怖いとか呟きながら引きこもっちまったんだぞ!?」
「いや……、殴りかかってきたから、ちょっと弾いて押し返しただけっすよ。したら偶々石に躓いて、花壇に突っ込んで、なんかピタゴラ的な……」
マジか如月君……
そんなことで引きこもるとか、どんだけメンタル弱いんだ……
それじゃ絶対番長とか無理だろう。
っていうか尾田君は尾田君でそれに責任感じている辺り、ちょっと人が好過ぎないか?
「……つまり、両方悪いってことで良いかしら!?」
……いや、良くないからね?
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