【実践練習第1日目】リレー小説

○ルール 出来れば数人でおこなう。ひとり何行までときめてリレー形式で物語を執筆してゆく。物語の〈ながれ〉を試行錯誤する練習である。今囘はひとりなので、一回三行(110字)までで、十回とする。



世界の心臓


1 ぼくの心臓は世界の心臓だ。ぼくの鼓動がしゆうえんするとき世界はしゆうえんする。ほうはくたる世界が誕生したときぼくは誕生したがゆゑにぼくがへいするときこんほうたる世界はへいすることになる。ひつきよう天壌無窮の世界とぼくとはいちれんたくしようなのだ。


2 天涯孤独なる世界とともに誕生したがゆゑにこそぼくも孤独であった。抑ゝさいたる世界が誕生したのうにはめいちようたる物質という概念が存在しなかった。ヒッグス場の構築とともにぼくのにくたいが構築されひつきよう脳髄と意識が誕生したことになる。


3 かんどくのまま百億年を超越する人生をけみしてきた。こんほうたる世界のなかではせんじようばんたいの科学的事件が勃発しやがて銀河系が誕生し太陽系が構築され地球がかいびやくした。世界の心臓をほうするぼくは地球の住人となった。


4 こくほうじようの地球の住人ひつきよう人類は偶然ゆゑか必然ゆゑかぼくと酷似するにくたいをもつようになる。めいちようと相違するのはかれ等には寿命という宿命があったことだ。世界の心臓をもち半永久的に生存できるぼくはかれ等にえいを譲渡した。


5 世界の心臓をもつひつきよう世界といちれんたくしようのぼくのこんぱくには世界そのものの記憶がざんとなっていた。あいまいと記憶といえねばせんめいたる知識と換言してもよい。いんの知識をえんえん長蛇たる歴史上で人類に享受せしめてきたのである。


6 もうまいなる人類はさんらんたるえいを籠絡した。しやくねつえんから鋭利なる石器かんがい技術建築技術――やがては拳銃やマシンガンなどの近代兵器からNBC兵器やICBMの製造法までぼくから伝授せしめられた。


7 なにゆゑにの人類にの人類みずからを破滅せしめるような科学技術をでんしたのか。抑ゝ科学技術に善悪やしゆくとくの概念は合致しない。善から科学が誕生し政治が科学を悪用するだけのことだ。ぼくの天命は知識を譲渡することだけだ。


8 やがて人類はたる超科学技術を濫用して世界最終戦争を勃発せしめた。ほうはくたる地球上百億の人口のうち七十億が犠牲になる。禍福はあざなえる縄のごとし。ゆゑにこそりゆうじよう虎視の世界は統一され世界統一こつが樹立されたのだ。


9 けいがくよく望にひようされた人類は窮極の能力をきゆうした。永遠の生命である。ざんながら永遠の生命をもてるのはひとり世界の心臓をもつぼくだけだ。傲岸不遜の人類はぼくの心臓をだつするためにとうじようして破滅した。


10 綿めんばくたる人類の歴史はしゆうえんした。ぎよう混濁の地球上にのこされたのはぼくひとり。ぼくはのうより人類はほうばいだとこうかくしてきた。ようなるほうばいは絶滅した。孤独に圧殺されるようにぼくは自決する。ぼくとともに世界もしゆうえんするのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る