第39話

「えと、あの……」


「そんなに緊張しなくてもいいよ、それにしても本当に可愛らしい子だ……」





グレゴリアが右手でレティの頬に触れる。





「ロストから手紙で君の事を教えてもらっていたよ、ボロボロの姿で森に倒れていたそうだね」


「……」





レティは表情を暗くして俯いた。





「ロストと出会う前は相当辛い目にあったんだろう……けど安心してくれ、もう君は私達の娘だ、私の事は本当の母と思ってくれて構わないよ」


「本当の、母……?」





レティが顔を上げてグレゴリアを見ると、グレゴリアは優しく微笑んだ。





「さあ呼んでくれ、お母さんと」


「お母さん……」


「そう、私がレティちゃんのお母さんだ」


「お母さん……お母さん!」





レティは眩しいほどの笑顔で嬉しそうにお母さんと連呼する。





「……た、堪らないぐらい可愛い!」


「きゃっ!?」





その笑顔を見たグレゴリアがレティを抱きしめた。





「なんて、なんて可愛いんだレティちゃんは! 前から娘が欲しかったけど、こんな可愛い娘が出来て私は幸せだ!」


「あ、あわわわわ……」





突然抱き着かれたので慌てるレティ。





「グレゴリア様! レティ様が驚いていますよ!」


「レティ様の可愛らしさがグレゴリア様の好みドストライクだったせいで抑えがきいてないみたいだ」


「本当、可愛いモノが大好きだよねー」








そのままグレゴリアはレティを抱きしめ続けるが、五分後には冷静さを取り戻し、レティを手離した。





「いやすまない、可愛いモノを目にするとどうも自制できなくて……すまなかっねレティちゃん」





グレゴリア人差し指で頬を掻いて反省する。





「いえ大丈夫です、むしろお母さんに抱きしめられて嬉しかったです」


「! い、いかん、あの笑顔を見ると自制が……落ち着け私……」





グレゴリアはまたレティを抱きしめたい衝動に駆られるが、何とか抑えていた。


そんな中、今まで黙って立っていたガルドがレティの元に歩きだした。





「え、えと……兄様のお父さん、初めまして……」





ガルドの威圧感に圧されたのか、レティが少し後ろに下がる。





「……」





ガルドは無言のままレティに向かってその大きな右手を伸ばした。





「ひっ……」





怖くなってしまい、レティは目を瞑る。





ガルドはそのまま右手を……レティの頭に置いて撫でた。





「……?」





レティは目を開けてガルドを見ると、ガルドは小さい声で呟いた。





「パパと呼んでも……良いんだぞ?」


「……えっ?」





レティが呆ける中、グレゴリアがガルドの身体を叩いた。





「ガルド! レティちゃんを怖がらせてどうするんだ!」


「……すまない、どう接したらいいか分からなくて……」


「まったく……お前は相変わらず口下手で不器用なんだから……ごめんよレティちゃん、この馬鹿が君を怖がらせてしまって……」


「大丈夫です、確かに最初は怖かったですけど……大きな手で頭を撫でられた時に感じたんです、とても優しい人なんだなって……だからもう怖くありません、改めてよろしくお願いします、お父さん!」


「……そうか」





レティの言葉を聞いてガルドが微笑んだ。





「ガルゥゥゥゥ」


「キュォォォォン」





キンとギンがレティの元に来る。





「あなたたちも初めまして……ひょっとしてクロちゃんとシロちゃんのお父さんとお母さんですか?」


「ほう、よく分かったねキンが父親、ギンが母親だ」


「やっぱり! 瞳がクロちゃん達にそっくりだからもしかしたらと思ったんです……よろしくねキンちゃんギンちゃん」


「ガルゥゥゥゥ♪」


「キュォォォォン♪」





レティに撫でられてキンとギンは嬉しそうに鳴いた。





「ハハハハハハハ! 相変わらずのようでなによりだ!」


「本当ねー、元気でなによりだわー♪」





レティ達が話す中、中庭にバジュラ王とルピア王妃、そしてラピスがやって来た。





「バジュラにルピアか、久しぶりだな、お前達も相変わらずそうでなによりだ」


「小母様ー!」





ラピスがグレゴリアに抱き着く。





「お久しぶりですー♪」


「やあラピスちゃん、今日も元気みたいだね」


「えへへー♪ 私はいつでも元気ですよー」


「本当に元気で可愛らしい……ゼノムと結婚して早く私の娘になって欲しいよ」


「私もそうなりたいけどー、ゼノムちんツンデレだからまだ素直になってくれないんですよー……けどそう言う所も好きなんだけど♡」


「まったく、あいつも早く兄離れしてくれればいいんだがな……まぁ立ち話をしても仕方ないだろう、話の続きは城の中で話さないか?」


「ハハハハハ! 確かにそうだな、では美味い茶菓子を用意させるのでダイニングに行こう」





話を一旦止めて、レティ達はダイニングルームへと移動した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る