第34話
―竜王城の一室。
「レティ様、大丈夫ですか?」
「は、はい……大分落ち着きました、皆さんに心配をかけて申し訳ありません……」
あの後、蟻人達は真っ赤になって固まっていたレティを部屋まで運んでベッドに寝かせ、扇で顔を仰いであげていた。
「ロスト様にレティ様の事伝えとくねー」
蟻人の一人が部屋を出て、ロストに報告しに行く。
「本当に申し訳ありませんでした……」
「いえいえ、レティ様は何も悪くありませんよ」
「実際女性の前に褌一丁で現れたロスト様が悪いしな」
「ロスト様はその辺の気遣いがあまりできないからな……」
「まぁ、『兄上に悪い虫が付かないように』とか言って、ゼノム様がロスト様に気がありそうな女性を片っ端から遠ざけたのも原因の一つでもあるが……」
『だよなぁ……』
蟻人達がため息を吐いていると、部屋の扉を開けてラピスが入って来た。
「レティちん大丈夫ー!?」
「ラピス様、……大丈夫です、ちょっと気が動転してしまっただけですから」
「そっかーそれなら良かったよー」
「ラピス、入り口の前で止まるな、部屋に入れん」
「あっごめーんロストちん」
ラピスが右側に移動し、ロストが部屋に入りレティに近づく。
「レティ、急に動かなくなったから心配したぞ」
「あ、兄様……」
ロストの姿を見たレティは、先程の褌姿を思い出し、頬を染めてロストから目を逸らした。
「? レティ何故目を逸らすんだ?」
「い、いえ、その……」
「顔も赤い、もしや熱があるのか?」
そう言うとロストは更に近づき、自分の額をレティの額にくっつけた。
「やはり少し熱いな……」
「あ、あにさ、あわわわわわわわわわ……」
ロストの顔を間近で見たレティは、再び顔を真っ赤にした。
「更に熱くなったぞ!? 大丈夫かレティ!?」
「ロスト様、申し訳ありませんが部屋から出てください!」
「しかしレティが……」
「今回に限ってはロスト様が近くにいるとレティ様は良くなりません、ここは私達に任せて下さい」
「そ、そうなのか? 分かった、では任せるぞ」
ロストは蟻人達の言う事を聞き、部屋から出ていく。
「うーむ……」
「ロスト、レティさんは大丈夫だったのか?」
廊下で待っていたグレンがロストに話しかけた。
「ああ、だがしかし俺が近づいたらまた真っ赤になってしまってな……俺が近くにいては駄目だとあいつ等に言われたので、仕方なく部屋を出てきたんだ」
「近づいただけで顔が真っ赤に?」
「ああ、レティに何も無ければいいのだが……」
「なに直ぐに良くなるさ、ところでどうだ? 今からひとっ風呂でも?」
「……そうだな、では行くとするか」
「……ぷはぁ、美味しいですねこの魔茶……」
ロストが部屋を出てから数十分後、落ち着きを取り戻したレティは冷たい魔茶を飲んでいた。
「それにしても、ロストちんの顔を間近で見ただけであんなに真っ赤になるなんて、レティちんったらピュアなんだからー♪」
「い、言わないで下さいラピス様……」
「ごめんごめーん、……でも流石に褌姿でレティちんの前で現れるのはどうかと思うよねー」
「ラピス様、その事を話すとまたレティ様が思い出して赤面してしますよ……」
「ああ、ごめんついねー……」
「だ、大丈夫です、もう兄様の褌姿を思い出して動揺したりしません!」
「おおー! レティちんかっくいー!」
「ところでレティ様、今日はたくさん歩いて汗を掻かれたようですし、夕食の前に入浴されたら如何ですか?」
蟻人が提案すると、椅子に座っていたラピスが勢いよく立ち上がった。
「それいいねー♪ レティちん、私と一緒にお風呂に入ろー♪」
「え? お風呂って一人しか入れないんじゃないんですか?」
「あー、ロストちんの家はそれぐらいの大きさなんだねー……むふふー、この城の大浴場を見たらレティちんびっくりするよー」
「そんなに凄いんですか? 何だか楽しみです」
「よーし! それじゃあ大浴場に出発進行ー!」
「きゃあっ!? ら、ラピス様、そんなに引っ張らないで下さいー!」
ラピスはベットからレティを起こし、腕を引っ張って大浴場へ向かった。
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