第33話


竜泉饅頭を食べ終えたレティ達は、店の玄関先にいた。





「竜泉饅頭、とっても美味しかっですね」





「うんうん、レティちんが気に入ってくれて何よりだよー♪」





「ふふふ……レティちゃんの食べる姿はほんま可愛らしかったわぁ♪ ほなレティちゃんラピスちゃんまた明日、気よ付けて帰るんよぉ」





「れ、レティさん! 良ければまた食べに来てくださいね!」





「いつでも竜泉饅頭を御馳走しますよ!」





「皆さん、ありがとうございます」





レティとラピスはヴィオラ達に見送られながら、城へ戻って行く。




















レティ達は温泉街を歩きながら、雑談を交わす。





「ヴィオラさんって、少し変わった人だけど、すごく優しい人ですよね」





「あ、わかるー? ヴィオラちゃんは私が子供の頃から一緒に遊んでくれてねー、この人がお姉ちゃんだったらなーってずっと思ってたんだー」





「それじゃあ、もうすぐその願いが叶うんですね」





「うんー! 本当はもっと早くお姉ちゃんになって欲しかったんだけどー……お兄ちゃんがヘタレだから大分待ったよー……」





「昔から仲が良かった人達が家族になる……素敵ですね」





「んふふー、そう言うレティちゃんはロストちんと今とは違う意味で家族になったらー?」





「え? それは……っ!?」





レティはラピスの言葉の意味を理解して顔を真っ赤にした。





「え、あ、その、私は、その……」





「あははー、ごめんごめん、そんなに戸惑わないでよー」





「もう、ラピス様……意地悪しないで下さいよ……」





「ごめんってばー、でもむくれてるレティちんも可愛いー♪」





楽しそうに話す中、ラピスが食べ物の露店を見て足を止めた。





「うわー! あれ美味しそうー♪ レティちん、ちょっと見ていこうよー!」





「あっ、ラピス様急に走ったら危ないですよー!」





レティ達は途中で露店に立ち寄ったりした。









































―城の庭園。





「ん~! どれも美味しい~♪」





城に戻って来たラピスは両手に沢山の食べ物を持っていた。





「いくらなんでも食べ過ぎじゃないですか?」





「全然平気だよー、まだまだ食べられるよー♪ ……ん?」





「どうしたんですかラピス様?」





「上見てー、あれって……」





ラピスに言われてレティが上を見上げると、上空から白い竜が城の中庭に降りようとしていた。





「あれって……シロちゃんですよね?」





「うん、と言う事はー……やっと来たんだー!」





ラピスが翼を広げ、中庭へと飛んで行った。





「あっ、待ってくださいラピス様ー!」





レティは小走りでラピスを追った。



































中庭に降り立ったシロの背中から、ゼノムとロウズが降りて来る。





「クルルルルルゥ……」





「ご苦労だったなシロ、ゆっくり休め」





「ろ、ロスト様がいないと分かった瞬間全速力で竜王国まで飛ばさないで下さいよ……」





「情けないですね、あの程度の速度で……む?」





「ゼーノーム-ちーーーーーーん!」





ラピスがものすごい速度でゼノムに抱き着こうとするが、ゼノムはラピスの突進を綺麗に回避し、ラピスは城の壁に激突した!





「そう何度も喰らいませんよ……ん?」





「ラピス様ー……あっ、ゼノム様……」





ゼノムはレティを見て、不快な表情を浮かべる。





「久しぶりだな小娘……あの時の勝負以来だな」





「は、はい……」





「ふんっ、あの時は邪魔が入りさえしなければ私の勝ちだったと言うのに……まぁ良い、いずれお前とは決着を着けてやるからな……誰が一番兄上に相応しいかを!」





「……私は自分が兄様に相応しいかなんてわかりません……でも、貴方には負けません!」





「ふんっ、その威勢だけは褒めてやる!」





二人の間に火花が散る中、レティを呼ぶ声が。





「おーい、レティー」





「あ、兄様……っ!?」





ロストの声を聞いて後ろを振り返ったレティの視界に、褌一丁のロストの姿が入り、驚愕していた。





「あ、あああ兄様!? なんで裸何ですか!?」





「ん? 何故って……さっきまでグレンと魔相撲の試合をしていてな」





「結局今回も勝負は引き分けだったがな……」





「それで勝負が終わったあと、風呂にでも入ろうと思ったらシロの姿を見つけてな……それで中庭に来たんだ……ってレティ?」





「あわ、あわわわわわわわわわわ……」





褌一丁のロストの姿を見て、レティは顔が真っ赤になり、頭から湯気が出ていた。





「レティ? 一体どうしてしまったんだレティは?」





「わからん……」





レティを見て首を傾げるロストとグレン、そして……





「……あ、兄上ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」





久しぶりの生ロスト、しかも褌一丁の姿を見たゼノムは鼻血を噴き出しながら、ロストの元へ走り出した!





「ちょっ! ゼノム様、鼻血鼻血!」





「お会いしとうございましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」





ロウズの言葉など耳に入るはずも無く、ゼノムはそのままロストに抱き着こうとする。





その時だった。





「ゼーノーム-ちーーーーーーん!」





「ごはぁっっ!!?」





ラピスがゼノムの脇腹に突っ込んできたのだ!





そのままの勢いでラピスとゼノムは城の壁に激突した!





「はははは、相変わらずだなあの二人は」





「お久しぶりですロスト様、お元気そうで何よりです」





「久しぶりだなロウズ、お前も元気そうで何よりだ」





「クルルルゥ♪」





シロがロストに近づき、頬擦りをする。





「シロも変わらずに元気そうだな」





「ロスト様ー!」





中庭の騒ぎを聞きつけ、蟻人達がやって来た。





「ゼノム様が来られたと言うのは本当ですか?」





「ああ、あの壁に居るぞ」





「え、何で?」





「たぶんまたラピス様じゃないのー?」





「だろうな……」





「それとロスト様……さっきからレティ様が顔を真っ赤にして固まっているんですが……」





「ああ、俺の姿を見た時からずっと顔を真っ赤にしていてな……どうしてしまったんだ?」





『……あー……』





蟻人達は大体のことを察した。





「とりあえずレティ様の事は私達が何とかしますので、ロスト様達は着替えてきてください」





「分かった」





「ところでグレン様、壁に穴開いてますけど大丈夫ですか?」





「安心しろ、ラピスが壁に穴を開けるのはいつものことだ、翌日には城の者達が修理しているだろう」





「そうですか……」





「この城は相変わらずカオスだねー」

















―ロスト達の竜王国滞在初日は、混沌としながらも夜を迎えようとしていた。

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