第29話
ラピスとレティは城の裏側にある庭園へと来ていた。
「レティちん、ここからはこの茂みに隠れて移動してねー」
「え? 何で隠れて移動するんですか?」
「良いから良いからー♪」
レティとラピスは茂みの中に隠れ、庭園を移動する。
「着いたよレティちん、ここにお兄ちゃん達がいるよー♪」
「? 達って事は、他に誰か居るんですか?」
「むふふー、それは覗いてみれば分かるよー♪」
レティは茂みから少し顔を出した。
すると前方に大きめの木の椅子に横並びで座っている二人の男女の姿が見えた。
一人は、竜王国第一王子のグレン・ザーク。
もう一人は、紫色髪のロングヘアで、着物を着た半竜人の美少女だ。
紫髪の美少女は自らの身体をグレンに密着させ、妖艶な笑みを浮かべていた。
「ヴィ、ヴィオラ……その、胸が当たっているんだが……」
グレンは顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。
「ふふふ、当ててるんよ、お顔真っ赤にして可愛らしいわぁ」
「そ、その……もう少し離れてくれると助かるんだが……」
「何でぇ?」
紫髪の美少女、ヴィオラは不思議そうに首を傾げた。
「いや、何でってその……女性がそんな無防備な姿を晒しては……」
「別にこれぐらい良いやないのぉ、……それに殿方の前で無防備な姿を晒したら、どうなってしまうん?」
「え゛、いや、その……」
グレンは答えることが出来ず、あたふたしている。
「なぁグレン……どうなってまうん? 教えてやぁ……」
ヴィオラは妖艶な笑みを浮かべたまま、更にグレンに密着する。
そしてグレンの頬に触れ、そのまま顔を近づけていく……
「だ……駄目だヴィオラ!」
グレンはギリギリのところでヴィオラから離れ、距離を取った。
「ああん、もう……グレンのいけずぅ……」
ヴィオラは残念そうに口を尖らせた。
「ヴィオラ、俺は小父さんと約束しているんだ……結婚するまでは君とはプラトニックな関係であると……だから結婚するまでこういう事は……」
「良いやない、結婚式まであと二日なんやし、それに……一年前ここでうちとキスしたやないのぉ」
「う……いやあれは君が俺の不意を突いて……」
「それとも……グレン、ひょっとしてうちの事嫌いになってしもうたん……?」
「そ、そんな事は……!」
「そうやなぁ……うちみたいに面倒な女なんて嫌やろなぁ……本当は結婚したくないんやろうなぁ……うぅっ……」
ヴィオラは両手で顔を覆い、下を向いて泣き出した。
そんなヴィオラを見て、グレンは慌ててヴィオラに近づき、肩を掴んだ。
「君を嫌いになるわけが無いだろ! 俺は昔から君が大好きだ!」
「ぐすっ……ほんまに?」
「本当だ! それに結婚だって今すぐしたいと思っている!」
「……なら、今ここでうちにキスして」
その言葉を聞いたグレンの顔が真っ赤に染まる。
「そ、それは……その……」
「グレン……ん……」
ヴィオラはグレンを見つめ、目をつぶった。
「ヴィ、ヴィオラ……」
グレンも目をつぶり、ヴィオラに顔を近づけていく。
「おお~お兄ちゃん遂に観念したみたいだね~」
その光景をラピスはウキウキとしながら見ていた。
「あ、あの……ラピス様、こういうのは見てはいけないと思います」
「え~いいじゃんレティちん、お兄ちゃんのこういう姿って滅多に見れないから見ていて楽しいんだよ~、レティちんだってロストちんの滅多に見れない姿があったら見たいでしょ?」
「そ、それは……み、見たいですけど……でも! こういうのはやっぱり見ては駄目だと思うんです!」
「ほんのちょっとだけ見るだけだよ~♪ さてお兄ちゃん達はそろそろキスしたかな~♪ ……あら?」
ラピスが茂みから再び覗き見しよう前を向くと、目の前に全身からオーラを放つグレンの姿があった。
「……何をしているんだ? ラピス」
「お、お兄ちゃん……いやこれはその~……」
ラピスは全身から冷や汗をかき、明後日の方を見た。
「お前また覗いていたのか……!」
「ち、違うんだよお兄ちゃん! その……か、かくれんぼをしててレティちんと一緒に隠れてたら、その……偶然お兄ちゃん達がキスしようとしていて」
「問答無用だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ぎいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
庭園にラピスの叫び声が響き渡った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます