第23話
ゼノムの言葉を聞いてリリィ達が驚きの声を上げた。
「せ、性転換の薬!? それって秘薬の一つじゃない!」
「ですよね、調合できる人はもうこの世には居ないと聞いてましたけど……」
「……驚いた」
三人が驚いている中、レティはロストに質問した。
「兄様、どうしてその人がゼノムさんだと分かったんですか?」
「ん? どうしてって言われてもな……自分の弟何だから分かって当然だろ?」
ロストの言葉を聞いてゼノムは感動していた。
「流石兄上……ゼノムはとても嬉しいです! ……あの、兄上、一つお願いがあるのですが……」
「お願い? 何だ?」
「私の頭を撫でていただけますか?」
「ん? 何だそんな事か、分かった」
ロストはゼノムの頭を軽く撫でた。
「これでいいのか? ゼノム」
「……」
ゼノムは無言で身体を震わせていた。
「ゼノム? どうした?」
ロストがゼノムの顔を見る。
「!? ど、どうしたんだゼノム、その鼻血は!?」
ゼノムは鼻から大量の鼻血が流れまくっていた。
「ご、ご心配なく兄上、兄上に撫でられて少し興奮しすぎただけですので……」
ゼノムは懐からハンカチを取り出し、鼻血を拭った。
「と、所で兄上、私を見て何か思いませんか?」
「思う? 何をだ?」
「ほら、何か癒されるとか、安らぐとか……」
「そう言えば頭を撫でた時、少しだけ心が安らいだ気が……それにお前を見ていると何か癒されてきているような……」
「本当ですか!? ……よし、薬の効果はちゃんと出ているみたいだな」
ゼノムはガッツポーズを取っていた。
「?」
「ロスト様ー、ただいま戻りましたー」
朝から森で木の実集めをしていた蟻人達が帰って来た。
「あれ、シロがいるぞ」
「……と言う事はまたゼノム様が来たのか?」
「あれー、何か知らない人がいるよー?」
蟻人達が女になっているゼノムを見た。
「久しぶりだなお前達、元気にしていたようだな」
「ん? え……もしかして、ゼノム様!?」
「あ、本当だー! 見た目変わってるけど、よく見たらゼノム様だー!」
「何で女になってるんだ?」
「……何かまた面倒な事が起こりそうだな……」
「皆さん、あの人がゼノムさんだと分かるんですか?」
「そうですね、まぁ長年一緒に居ますから、雰囲気とかで分かるんですよ」
「そうなんですね……」
レティと蟻人達が話していると、ロストがゼノムに質問した。
「そう言えばゼノム、今日は何の用でここに来たんだ?」
「実はですね、そこに居る小娘に用がありまして……あ、兄上、良かったらこれ食べてください」
ゼノムはロストに魔リンゴと言う果物を渡した。
「おお、これは美味そうだな、ありがとうなゼノム……美味い!」
ロストは魔リンゴを食べ始めた。
「……さて、おい小娘」
「な、何ですか? また妹を辞めろとかですか?」
ゼノムに話しかけられたレティは警戒していた。
「小娘、以前お前に試練を与えた事は憶えているか?」
「は、はい、覚えていますけど……」
「あの時は兄上が試練何かする必要が無いと仰られたから仕方なく中止した……だがしかし、あの時の決着を付けなければ私は納得できない!」
ゼノムはレティを指差した。
「勝負だ小娘! 今ここであの時の決着を付けさせてもらうぞ!」
「決着をって……ゼノム様、その事とゼノム様が女になった事は関係があるんですか?」
蟻人がゼノムに質問した。
「勿論だ、今回行う最後の試練のために私はこの姿になったのだからな」
「? どう言う事……」
その時、何かが地面に倒れる音がした。
「何だ!?」
「!? ロスト様!?」
「兄様!?」
そう、ロストが突然地面に倒れたのだ。
「兄様、しっかりしてください、兄様!」
「安心しろ、眠っているだけだ」
「眠っているだけって……」
「私がさっき兄上に渡した魔リンゴは只の魔リンゴではない、あれは永久の契りと呼ばれる物なのだ」
ゼノムの言葉を聞いたリリィが驚いていた。
「永久の契りって……百年に一度しか実らないと言われる幻のリンゴじゃない! たしか食べた者は眠り病を発症して、永遠に眠り続けるとか……」
「そんな……!? ゼノムさん、何故兄様にそんな物を!?」
「落ち着け小娘、そこの人間の小娘が言った話は言い伝えの一部だ、言い伝えには続きがある」
「続き?」
「永久の契りを食べた者を目覚めさせる方法はただ一つ、その者を誰よりも想っている者の口付けだけと言われている」
「口付けって、も、もしかして……」
ゼノムはにやりと笑みを浮かべた。
「そう、これこそが最後の試練! 兄上にキスをして目覚めさせた方が勝ちだ!」
ゼノムは堂々と、そして自信満々にそう言い放った。
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