第19話

―ロストの家、リビング。


ロストがラック達を家に連れてきた後、ラックを床に寝かせ、起きるまでくつろいでいた。


「兄様、魔茶です」


「ありがとう、すずっ……美味い! やはりレティの淹れた茶は最高だな!」


「ふふっ……ありがとうございます、兄様」


「「「………」」」


ロストとレティのほのぼのとしたやりとりを、少女達は呆然と眺めていた。


「皆さんもどうぞ飲んでください」


そう言うとレティは少女達の前に魔茶を置いた。


「ど、どうも……」


「いただきます……」


「……ずずっ……」


魔茶を飲んだ少女達は、皆同じ感想を言った。


「「「美味しい!」」」


「ふふっ、お口に合ってよかったです」


「本当に美味しいわ、このお茶」


「喉越しは爽やか、後味もスッキリしますね」


「……絶品……」


少女達は魔茶の美味しさに笑顔になっていた。


「当然だ、レティの淹れてくれた茶は世界一だからな!」


「あ、兄様……」


ロストは満足そうにそう言い、それを聞いたレティは頬を赤くして照れていた。


「……あの、聞きたいことがあります……」


「ん? 何だ?」


「……貴方は魔族ですよね?」


「ああ、そうだが?」


「……何故魔族であるあなたが人間の少女を自分の妹と言って傍に置いているんですか?」


「何だそんな事か、そんなの一緒に居たいからに決まっているだろう」


「……一緒に居たい?」


「ああ、レティと一緒に居ると俺はとても癒されるんだ、特に笑顔を見るととても癒される、そしてレティと共に日向ぼっこをしながらレティの淹れてくれた魔茶と菓子を食べる時はとても癒される時でな……」


「あ、兄様、それ以上はその……恥ずかしいから言わないで下さい……」


「何故だ? 俺はただこいつらにレティと一緒に居たい理由を言っているだけだぞ?」


「で、ですから……うう……」


レティは恥ずかしくて顔が真っ赤になる。


「……何か、最初に見た時と全然違うわね」


「はい、最初は恐ろしいだけだったのに……今は優しいお兄さんって感じですね」


「……確かに、最初は殺されると思ったけど……」


「……う、うう……」


少女達が話し合っていると、床で寝ていたラックが目を覚ました。


「ラック!? 目が覚めたのね!」


「良かったぁ……」


「……ラック、大丈夫?」


少女達がラックの周りに集まる。


「皆……あれ? ここは一体……?」


「おお、目が覚めたみたいだな」


ロストがラックに近づいた。


ラックはロストをの顔を見てこう言った。


「……貴方は……誰ですか?」


「……ん?」


「「「「……ええっ!?」」」」


ロスト以外の全員がラックの言葉に驚きの声を上げた。


「ラ、ラック? まさかと思うけど……覚えてないの?」


「覚えてないって……何を……痛っ!」


ラックが頭を抱えて苦しみ始めた。


「そうだ……俺は確か……レティさんを魔物達から助けて……そしたら空から何かが来て……そうか!」


ラックは立ち上がり、ロストを見た。


「思い出しました……貴方は……」


ラックは堂々とした態度でこう言った。


「俺を助けてくれた命の恩人ですね!!」



「「「「「……は?」」」」」


ラックの言葉に全員があっけにとられた。


「すべて思い出したんだ! 俺はあの時レティさんを追って来た魔族と戦ったけど、手も足も出ずにやられて……そんな絶体絶命のピンチにこの人が現れ、魔族を倒して俺達を救ってくれたんだ!」


「……」


ロストは変な物を見るような目でラックを見ている。


「ラ、ラック……それ本気で言ってるの……?」


「ああ勿論だ! 俺の記憶に間違いはない!」


「……いや、間違ってるって……」


「ラックさん、またいつもの悪い癖が……」


「……もはや呆れる……」


少女達はラックの暴走に呆れていた。


そんな時、部屋に蟻人達が入って来た。


「ろ、ロスト様ー……」


「置いて行くなんて酷いですよぉ……」


「つ、疲れた……」


蟻人達を見てラックが驚いた。


「あれはレティさんを襲った魔物!? 何故ここに……そうか! そう言う事か!」


ラックは再びロストを見た。


「ロストさん、でいいんですよね?」


「ん? ああ」


「ロストさん、貴方は敵の手先である魔物達を懐柔し、自らの仲間にしたんですね! 凄すぎます!」


「「「……はぁっ……」」」


少女達がため息を吐いていた。


そんな少女達を気にせずに、ラックはロストに頭を下げた。


「ロストさん! 貴方に頼みたい事があります!」


「……何だ?」


「俺を貴方の弟子にして下さい!」


『『えええええっ!?』』


ロスト以外の全員が驚きの声を上げた。


「俺はある目的のために強くならなくちゃいけないんです! ……けど今日魔族に負けて分かったんです、俺はまだまだ弱いって事が……だから貴方の元で強くなりたいんです! お願いです! 俺を貴方の弟子にして下さい!」


「ああ、良いぞ」


『『そんなあっさり!?』』


蟻人達が驚いていた。


「ほ、本当ですか!? ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」


「ああ、よろしくな」


「ちょっ、ロスト様! そんな簡単に了承して良いんですか!?」


「ああ、こいつ面白いから弟子にする、良いだろ」


「いや良いだろって……はぁっ……またいつもの思ったことを直ぐに実行するロスト様の悪い癖が……」


「もう諦めるしかないねー……」










―こうして、勇者ラックはロストの弟子となった。










簡易キャラ紹介



ラック


年齢17歳

ペルパニア王国と言う国の勇者。

魔王を倒すために旅をしていた。

記憶違いでロストを命の恩人と勘違いし、弟子入りした。






リリィ


年齢17歳

ラックと共に旅をしていた弓使いの少女。

たまに暴走するラックに頭を抱えている。







ティア


年齢17歳

ラックと共に旅をしていた魔法使いの少女。

占いを得意としているが、10回に1回当たるか当たらないかと言う程外れる。







シキ


年齢15歳

ラックと共に旅をしていた忍者の少女。

普段はあまり喋らず、好きな話になると饒舌になる。

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